| 🎼 | 「サイラス先生って彼女居ないの?」 |
|---|---|
| 📖 | 「居ないよ。独り身だからこそ自由に動き回れている所は有るかな」 |
| 🎼 | 「ふぅん? だから作る気も無い?」 |
| 📖 | 「そういったご縁が有ればお付き合いも吝かではない。ただ私は、教師として教鞭を執る事も多く、学問への理解を更に深めるべくあらゆる事柄に没頭してしまいがちだから、相手の事を疎かにしてしまう恐れも有る。それは失礼な行為だし、私よりも相応しい男性が居るだろうから……勿論、お付き合いをする事になったら相手を大切にするつもりでいるがね。そんな機会はそうそう訪れないのではないかな」 |
| 🎼 | 「……意外と自己評価低いんだ」 |
| 📖 | 「そう聞こえてしまったかな、卑下しているつもりは無いのだが。正当な評価は有り難く頂戴しているよ。天才や超人などといった過度なものには畏れ多い、私はそういった類いの人間ではないのだがな、と思うだけで」 |
| 🎼 | 「そんな所でもバッキバキに折っちゃうのかぁ、無自覚鈍感クラッシャー……」 |
| 📖 | 「うん?」 |
| 🎼 | 「格好良い~、顔が良い~、って言われてても自分じゃそうは思ってないんだな、って」 |
| 📖 | 「外見についてか……自分では美醜の良し悪しは分からなくてね。そう思ってもらえるのは光栄な事なのだろうが、度々言われているのも社交辞令なのだろうと捉えているよ。相手を褒めるのは会話を円滑に行う為の手段でもあるし、出会う人々は巧みな話術を備えているようで感心してばかりだ」 |
| 🎼 | (本気で格好良いと思って言ってる人の方が多いんだって……) |
| 🎼 | 「じゃあ先生がわたし達を褒めてくるのも社交辞令だ」 |
| 📖 | 「まさか、本心からの言葉を伝えているだけさ。私は常々、キミ達に感心しているし、教わる事も多い」 |
| 🎼 | 「そう? 技術的な事とかは無くはないのかもだけど……」 |
| 📖 | 「今も私は、クローチェ君を可憐で聡明な女性だと思っている」 |
| 🎼 | 「……へっ?」 |
| 📖 | 「キミの感性が選び取る表現は、人柄のように明るく、親しみ易く、子供にも好まれるものが多いのだが。それだけではなく、言葉選びも妥協せず最適なものを、知識が足りていなければ補おう、と学びの姿勢を心掛けながら曲作りに励んでいる事が、素晴らしいと思う。教えてほしい、と私を頼ってくれる事も嬉しいよ」 |
| 🎼 | 「ん、んん?」 |
| 📖 | 「また踊りにも、観客を笑顔にしたいと情熱が込められているからこそ、見る者を惹き付け、喝采を浴びるのだろう。私もキミの舞を見ていると楽しい気分になれる。より良い歌と舞を皆に届けたいとたゆまぬ努力を続けているストイックさを持ちながらも、それを感じさせないような可愛らしい笑顔も非常に魅力的で……」 |
| 🎼 | 「ままま待って、ちょっと待って!? いきなりのべた褒めタイム何!? それこそ社交辞令っていうか、急に長々褒め始めるのびっくりするから勘弁して~っ!!」 |
| 🎼 | 「ねぇねぇテリオン、テリオン」 |
|---|---|
| 🍎 | 「…………」 |
| 🎼 | 「あっ、見て見てテリオン! 可愛いアクセサリー売ってる! あっちの服も綺麗~!」 |
| 🍎 | 「…………」 |
| 🎼 | 「テリオン、今の見た!? 仲良しふわっふわにゃんこ! 友達なのかなぁカップルかな? 後でもう一回会いに行っちゃおうかな~?」 |
| 🍎 | 「…………」 |
| 🎼 | 「テリオンってば、ね~ね~テリオン~! テリオンさ~ん! 聞いてる~?」 |
| 🍎 | 「……うるさい。いちいち呼ぶな、話し掛けるな」 |
| 🎼 | 「聞いてほしいし話したいから話し掛けてるんだって! ちょっとくらいは返事してくれても良いじゃん」 |
| 🍎 | 「必要以上に話し掛けてくる奴に毎回返事していられるか、めんどくさい」 |
| 🎼 | 「ええ~? じゃあせめて顔だけこっち向いてよ! 興味無さそうな話も勝手に喋るから」 |
| 🍎 | 「興味無いのが分かってて話し続けるな……ただでさえあんたと居ると目立つんだ、仕事がやりづらい。向こう行ってろ」 |
| 🎼 | 「……ん。邪魔なら、離れるけど。でも、本当に……返事してくれなくても、呼んだら顔だけは向いてくれたら嬉しい。声、ちゃんと届いてるんだ、って分かるから」 |
| 🍎 | 「…………。……気が向いたらな」 |
| 🎼 | 「!! やった! 約束だからね、テリオン!」 |
| 🍎 | (…………はぁ。相手しないとまたしつこく絡んで来るんだろうな。喧しいし鬱陶しい。テンションの差も激しくて疲れる。面倒な女だ、本当に……) |
| 🎼 | 「神官のお務めって聖火の教えを広める事でもあるんだろうけどさ。なんだっけ、あの……皆で集まった時に歌ったりするやつ! アレもやってるの?」 |
|---|---|
| ⛪ | 「集会での賛美歌の習慣の事でしょうか。回数はあまり多くはありませんが、していますよ」 |
| 🎼 | 「へぇ~、じゃあオフィーリアも歌えるんだね。聖典はほぼ毎日読んでるっぽいけど、歌は毎日してなくても良いんだ?」 |
| ⛪ | 「そうですね、毎日歌う神官も居るとは思いますが……大切なのは神に祈りを捧げる事、その時間を設ける事ですから。今は旅の最中なので、足繁く教会や聖堂へ通う事は難しい代わりに、日課である聖典を読んで教えをなぞり、それから聖火神への祈りを捧げています」 |
| 🎼 | 「ふんふん、なるほど。想いが有ればだいじょぶって事だ。ね、歌う場合はどんな感じになるの? オフィーリアの賛美歌、聞いてみたい!」 |
| ⛪ | 「えっ、今ですか? いきなりはその、心の準備が……」 |
| 🎼 | 「聞きた~い! だめ?」 |
| ⛪ | 「で、では、少しだけ……こほん。……♪~」 |
| 🎼 | 「……!!」 |
| ⛪ | 「……はい、こんな感じです。いかがでしたでしょうか?」 |
| 🎼 | 「オフィーリアの歌、すんっごい綺麗……! 感動しちゃった! 元々綺麗な声してるなぁとは思ってたけど歌うとこんな感じなんだ~! この辺の空気が浄化された気がする!」 |
| ⛪ | 「そんな効果は無いと思いますが……でも、ありがとうございます。歌も披露されているクローチェさんにそう言っていただけると、ちょっとだけ自信が持てます」 |
| 🎼 | 「どんどん持って、いっぱい持って! こんなに綺麗なんだからもっと歌っても良いくらいだよ! ついでに踊りも付けちゃうのはどう?」 |
| ⛪ | 「さ、流石に踊りながら祈るのは恥ずかしいです……」 |
| 🎼 | 「え~? 残念。でもそのうち一緒に踊ったりもしようね。わたしも賛美歌覚えようかな? そしたら一緒に歌えるよね」 |
| ⛪ | 「ふふ。クローチェさんと合唱出来たら、神も笑顔になってくださる気がします」 |
| 🎼 | 「ねぇねぇアーフェン、作れる薬って怪我や病気を治すやつだけなの?」 |
|---|---|
| 🌿 | 「いや、そうでもないぜ。まだそんなに種類多くは作れねえけどな。クローチェが使えそうなモンっていうと、そうだなぁ……日焼け止め、目薬、保湿するやつ、喉に効く薬とか? 髪の手入れに使えそうなのも良さそうだよな」 |
| 🎼 | 「ほ、欲しすぎる……言い値で買うから全部売ってほしい」 |
| 🌿 | 「お代なんていいって、役立つならいつでも作ってやるよ」 |
| 🎼 | 「アーフェン気前良すぎ! ちゃんと元取らないとお財布空っぽになるよ!?」 |
| 🌿 | 「ははっ、よく言われる。聞いてきたっつー事は、何か作ってほしい薬でも有るのか?」 |
| 🎼 | 「うん、薬っていうか……香水? 調合するって点では似てるのかな~って。気に入ってた香りのが有るんだけどそろそろ無くなってきて、でも買ったとこ遠いからすぐには手に入んないし……新しいのを探す前に、手作り出来たりするのかなぁって思ったんだ」 |
| 🌿 | 「なるほどなぁ。香水付けてたら、踊ってる方も見る方も良い香りがしてきて気持ち良さそうだよな。どんな感じの香りにしたいんだ? 材料採りに行って作ってみるわ」 |
| 🎼 | 「ありがと~! 言い値で買わせろください!」 |
| 🌿 | 「良いんだって、役に立てりゃあそれでよ。香水は試してみた事ねぇから、上手く出来るかも分かんねえし」 |
| 🎼 | 「じゃあじゃあ、材料探す時わたしも行く! 自分で使うんだし、それくらいは手伝っても良いよね?」 |
| 🌿 | 「おっ、そいつは助かるな。そんじゃ、まずは希望を聞くとするかね」 |
| 🎼 | (ぐう) |
|---|---|
| 🎼 | 「……あ、お腹鳴っちゃった」 |
| 🏹 | 「なんだ、朝食をあまり食べておかなかったのか?」 |
| 🎼 | 「いや~? 美味しくて結構食べた気がするんだけど……動き回ってたからかな、空いちゃったみたい。どっかでおやつ買おうかな、おやつ~」 |
| 🏹 | 「干し肉を小さく切ったものなら有るぞ、ほら」 |
| 🎼 | 「おお、食べる! ありがと! ……うんっまぁ~……味も美味しいし食べやすい。サイズも大きすぎなくてちょうど良い。ハンイットのお手製?」 |
| 🏹 | 「あぁ。狩りに出ていると休憩を取る余裕が無い時も度々でな、小腹が空いた時の為にすぐ食べられる保存食を用意しておく事も有る。硬いと噛み切るのも大変だろう? 手間取っている間に獲物が逃げ出した、なんて事が無いよう、食感についてもこだわって作ってある」 |
| 🎼 | 「狩人おやつ、商品化したら売れるよ絶対。お肉と素材獲って売って~は有ると思うけど、こういうのはしてないの?」 |
| 🏹 | 「考えた事も無かったな……そうした保存食は自分用に作ってあるだけだからな。欲しいと言われたら提供するのは構わないのだが」 |
| 🎼 | 「トレサに頼んだらすぐ乗ってくれるよ。商売のニオイがする! どんどん売り出しましょ! って感じで」 |
| 🏹 | 「はは、言われそうだ。多めに作っておかないと、自分達で食べる分も無くなってしまいそうだな」 |
| 🎼 | 「ね、これリンデも食べる? 好き?」 |
| 🏹 | 「あげても良いぞ」 |
| 🎼 | 「やった~! リンデ、ハンイットにおやつ貰ったよ~!」 |
| ⚔️ | 「踊りと音楽の大会か……祭のように活気が有って良いな。見ているこちらも元気を貰えるようだ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「良いよね、こういう雰囲気。演奏するのも舞うのも歌うのも、見てるお客さん達も、皆が笑顔になれるから。ホルンブルグでも賑やかなお祭りって有った?」 |
| ⚔️ | 「建国記念や王の生誕日を祝う祭は催されていたな。あとは、オルステラで定められている祝祭の時などだったか……こうした突発的な催しも有ったとは思うが、俺達は騎士としての務めで城や民を守る事に専念していて、あまり関与はしていなかった。祭だからと酒を飲み交わすくらいだな」 |
| 🎼 | 「でも、オルベリク達がしっかり守ってくれてたから、皆が安心してお祭りの準備して開いて~って出来たんじゃないかな。ほら、賑やかになるとどうしても羽目を外しちゃう人だって出てきちゃうだろうし」 |
| ⚔️ | 「確かに、羽目を外しすぎて人に迷惑を掛けてしまう者を取り締まった事も有ったな。酒を飲みすぎた酔っ払いが、何がどうなってそうしたくなったかは分からんが、国旗を掲げている柱に登って降りられなくなった……という珍事も有った」 |
| 🎼 | 「気分が上がりすぎて高いとこ登りたくなっちゃったのかな? 落ちたら危ない……」 |
| ⚔️ | 「楽しむのは構わんが、お前はそうした突飛な行動はしないでくれると助かる。何が有っても守ってやるつもりではいるがな」 |
| 🎼 | 「は~い。騎士さまが楽しくお酒飲んでいられるような感じで満喫しまっす!」 |
| 🌹 | 「こんなにも踊子が集まる場が有るなんてね。音楽を愛している人達も沢山。あの人も、あの人も、皆楽しそう。……ちょっと羨ましいわ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「プリムロゼも参加しちゃえば良いのに。ビシッと決めてお客さん達を沸かせたら、きっと楽しいよ?」 |
| 🌹 | 「視線を独り占めしてみせる自信は有るけど……今回は見る側で居ようと思うの。盛り上がりの雰囲気が私の知っているものと全然違うから、この空気を楽しんでいたくて。今から組んでくれる演奏家を探すのも大変そうだしね」 |
| 🎼 | 「そっか。じゃあ色んな人達を見て楽しんじゃって! きっと踊りたくて仕方無くなるくらい元気になるよ」 |
| 🌹 | 「ふふ、そうなったら大会に関係無く踊っちゃおうかしら。クローチェが優勝したとしても、私がお客さんを全部奪ってしまうかもしれないわね」 |
| 🎼 | 「わぁ、有りそうで怖い。でも、その時はその時っていうか……楽しんでくれたら良いなって思うよ。一番を決める勝負ではあるけど、悔しい~を感じる人も出るだろうけど、こういうのって笑顔になる為であってほしいから。勿論、わたしも負けらんない理由が有るから頑張るけど!」 |
| 🌹 | 「ええ、応援してるわ。大勢の人達を、あなたの舞で魅せてきなさい」 |
| 🎼 | 「まっかせて~!」 |
| 🌹 | (……この大会が終わる頃にはきっと、笑顔になる為の踊りがどんなものか、知れる気がする。競い合っていても、あんな妬み恨みばかりではない、爽やかな賞賛を向け合えるような……陽が差す世界を。……私も、そうした舞台に立っていられるようになるのかしら) |
| 💰 | 「ご両親の遺作の楽譜って、一体いくらで取引されていたのかしら。曲に、歌に、踊りに……それもかなりの量が有ったのなら、結構な額いってたんじゃないの?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「ん~? どうだろ。稼ぐ為でもあっただろうけど、どのくらいで売れた~とかいう報告はあんまり聞いた事無いかも。気に入ってもらえた、って喜んでたのはいつもだったけど。作ったからあげるね、っていうのをしてた方が多いんじゃないかな」 |
| 💰 | 「ええっ、タダであげちゃってたの!? こんなに素敵な曲なんだから、ちゃんと正当な値が付いてなきゃ勿体無いわよ……! 商売道具なら尚更!」 |
| 🎼 | 「トレサってそういうとこキッチリしてるよねぇ。素敵な曲だって思ってもらえただけでも嬉しいと思うよ、お父さんもお母さんも」 |
| 💰 | 「クローチェも自分で曲作りするのよね? 誰かにあげる、というか、曲を売った事は無いの?」 |
| 🎼 | 「売るのはした事無いなぁ。確認出来るよう手元に残しておいてるし……人に渡すとしても、売買じゃなくプレゼントになるかな。相場もよく分かんないや」 |
| 💰 | 「そうなんだ……じゃあもし、クローチェの曲を気に入ったお客さんから売ってほしいって言われたら、あたしに相談してよね。低すぎの値は付けさせないし、お互いが得をするように交渉するわ。良い商品が相応価格じゃない取引をされてたら放っておけないもの!」 |
| 🎼 | 「あっは、頼もしい~! トレサが監督商人してくれてたら、み~んな笑顔でいられそう! そういう時が来たら、お願いしよっかな」 |
| 💰 | 「うんうん、任せておいて! 絶対に損はさせないから! 音楽や踊りみたいな形の商売も勉強してみたかったから、あたしにとっても良い経験になるはず……あっ、利用するつもりで言ったんじゃないからね!? 酷い値が付けられたら嫌だなって思っただけで……!」 |
| 🎼 | 「娯楽を下に見てる人達が居たから、わたしも被害に遭わないか心配してくれたんでしょ? 分かってるって、だいじょぶ。ありがとね、トレサ」 |
| 💰 | 「へへ、お礼言われるような事は何もしてないけど……皆の頑張りは大事にされていてほしいから。あたし達がしっかり見て、楽しんで、還元しなくちゃね」 |
| 🎼 | 「オフィーリアがもふまみれになってる……」 |
|---|---|
| ⛪ | 「近寄って来てくれたので撫でていたら、いつの間にかこんな事になってしまいました。どの子も気持ち良さそうに寝ているので、動けなくて」 |
| 🎼 | 「わたしも~、ぼくも~、って来ちゃったのかな。良いなぁ、にゃんこもわんこも沢山で。すやすやの、もふもふ……あっ!!!」 |
| ⛪ | 「ど、どうしました? 急に大声を出して……」 |
| 🎼 | 「ごめ、起こしちゃったかな、ごめんって……えっと、良さげな歌詞が書けるかもしれないと思ってさ。ちょっと前から考えてたテーマが有ったんだけど、なかなか上手くいかなくて保留にしてて。こんな風に撫でられるのが好きだったり、そのままスヤァってお昼寝始めちゃったり、次から次にやって来て集まっちゃったり……オフィーリアと一緒に居るとこ見てたらイメージ湧いてきた。メモしなきゃ! 手帳……は今持ってなかった……!」 |
| ⛪ | 「何か書くものが有れば良いのですが……すみません、わたしも今は何も持っていなくて」 |
| 🎼 | 「ううん、だいじょぶ! こんな所にちょうど良い枝が! これで地面にメモを…………あ、ちょ、これ遊ぶやつじゃないって、待っ……あ、ああ~~返してわんこ……」 |
| ⛪ | 「枝、銜えて持って行かれちゃいましたね……」 |
| 🎼 | 「るんるんで盗られちゃったね……じゃあ別の枝を探せば良さそ、うおぅっ!?」 |
| ⛪ | 「クローチェさんのベールに猫たちが……! ひらひらと揺れているから、気になってしまったのでしょうか」 |
| 🎼 | 「やめ、ちょ、や、破ける! びりっていくから! ストップにゃんこ絡んじゃダメ! た、助けてオフィーリア~!!」 |
| ⛪ | 「あぁ、今度はクローチェさんがもふまみれに……」 |
| 🎼 | 「こんなもふまみれは困るってぇ~~~っ!!!!」 |
| 💰 | 「クローチェ、この布地はどう?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「どれどれ~……うん、風通し良さそう。動き回ってもベタついたり、すぐ破けちゃったりはしなさそうだよね」 |
| 💰 | 「よし、じゃあこれにする。おじさん! この布と、そこに掛けてある服もちょうだい! あ、あとそっちのアクセサリーも見たいんだけど!」 |
| 🎼 | 「張り切ってるなぁ。素材の詳しい事とか分かんないんだけど、仕入れのお手伝い出来てる?」 |
| 💰 | 「ちゃんと役立ってるわよ。今あたしが求めているのは、踊子の感性。踊りの邪魔にならないか、身に付けてみたいと思うか、そういった意見が欲しくて」 |
| 🎼 | 「踊子の感性っていうなら、プリムロゼにも聞いてみた方が良いんじゃない?」 |
| 💰 | 「それは大丈夫、前にお願いしたから問題無いわ。二人とも傾向が違うでしょ? プリムロゼさんは、ええと、セクシーなお姉様で、クローチェは元気な女の子。身に付ける品物も、好きな色合いも別々。共通してる事も有るだろうけどね。要するに、客層が違う商品を仕入れたいから、今日はクローチェに見てもらってるって事よ」 |
| 🎼 | 「な~るほど。わたしが気になる物は、似た好みの踊子や普通の女の子に売れるかもしれない、って事だ」 |
| 💰 | 「そうそう! 分かってきたら一人でも選べるようになるから。という訳で、どれが良いのか好きだと思うか、どんどん聞かせてよね。参考にさせてもらうわ」 |
| 🎼 | 「おっけ、じゃあね~……あ、これ好きだなぁって言ったやつが、これは売れないかもしれない……ってトレサは思ったら、却下になったりする?」 |
| 💰 | 「それは……まぁ、そういう事も、有ったり……うん、有ったり……するかもね」 |
| 🎼 | 「目利きバッチリ商人の判断厳しい~……」 |
| ⚔️ | 「……ううむ。これは、どうすべきか……」 |
|---|---|
| 🎼 | 「オルベリクが渋い顔してる。手に持ってる、それ?」 |
| ⚔️ | 「あぁ。つい先程、ご老人の手助けをしたらお礼に、と頂いたのだが……その、あまり好みではない味をしていてだな……」 |
| 🎼 | 「ふぅん? ちょっと貰っても良い?」 |
| ⚔️ | 「構わんが、俺が難しいならお前も苦手だと思うぞ」 |
| 🎼 | 「ほほう。はむ。…………う、ぬぬ……渋い、苦い? 辛い? 濃い? なんとも言い難い味がするぅ……」 |
| ⚔️ | 「無理して噛まなくて良いんだぞ」 |
| 🎼 | 「ん、んん~……! お、お水、お水欲しい……」 |
| ⚔️ | 「ほら」 |
| 🎼 | 「ごく、……ぷは! ……はぁ~、独特すぎる味付けだった……!」 |
| ⚔️ | 「恐らくは、あの人の手作りなのだろうな。ご厚意でくれたものだから完食したいとは思うのだが……どうしたものか」 |
| 🎼 | 「そのまま食べるとすんご~い味がするけど、他の食べ物と一緒に食べたらイケるとか?」 |
| ⚔️ | 「ふむ、そうだな……何かと合わせてみるか。もし、それでも難しいようであったら……」 |
| 🎼 | 「あったら?」 |
| ⚔️ | 「…………これも鍛錬だと思い、一気に飲み込む」 |
| 🎼 | 「そんな苦行しなくても……皆にも聞いて食べ方考えようよ」 |
| ⚔️ | 「……そうするか」 |
| 🏹 | 「…………」 |
|---|---|
| 🎼 | 「あれ、どしたのハンイット。リンデもなんか、警戒してるっぽいけど……気になる事でも有るの?」 |
| 🏹 | 「実は、この町に着いてから妙な視線を感じていてな。殺気ではないが……見定めるような、じとりとした視線だ。何者かが我々を狙っているのだとしたら、警戒を怠るべきではないと思ってこうしている。杞憂であれば良いのだが……」 |
| 🎼 | 「ふたりとも気になるって事は、相当やばいやつなんじゃ……いきなり襲って来たりする、のかな。先手必勝でけしかけちゃう?」 |
| 🏹 | 「それも考えはしたが……つい先日、そうするべき状況以外ではけしかけるのを控えてくれ、とトレサに言われてしまったんだ。町の人達に悪い印象を与えてしまったら、手回しをしてもらうのだって大変なのだから……と」 |
| 🎼 | 「あ、あぁ~……わたしも原因なやつ……でも、わたし達そんな頻繁には怒らせちゃってないよね。どっちかっていうと……」 |
| 🏹 | 「……あの人達は、気になるとあまりじっとしていられないようだからな……得たものに助けられている部分も多いから、禁止にしてしまう訳にもいかないだろう。改めて挑もうとしなくても良い、とは思うが」 |
| 🎼 | 「あっはは……めげないよねぇ。それじゃあ、けしかけはしないけど警戒は続けてる、って感じなんだ」 |
| 🏹 | 「決定的な証拠が無いから行くに行けない、というのも理由ではあるがな。いつ手を出してくるか分からない。気を付けてはいても、絶対に回避出来るとは限らない……クローチェ、あなたも気を付けておいてくれ」 |
| 🎼 | 「分かった、覚えとく」 |
| 🎼 | (じとり、とした視線か……似たようなのを感じた事有るかも。な~んか、こう……嫌な事を思い出しちゃいそうな。……何も無いと、良いんだけどな) |
| 🌹 | 「……本当に、何処へ行っても最低な男は居るものね。いっそ全員どうにかしてやろうかしら、とさえ思えてきちゃうわよ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「あっは、めちゃめちゃ怒ってる~……でも本当、嫌だし怖いよね。人扱いじゃないっていうか、物扱いですらなかったりとか……わたし達、ちゃんと生きてるのにな」 |
| 🌹 | 「踊子も、女も、見下す輩は居るわ。だからこそ、舐められないように上手く取り入って乗り切って、心を折らないように自分を守りながら、生き抜くのよ。私はそうしてきた。……犠牲にしてきたものも、多いのでしょうけど」 |
| 🎼 | 「プリムロゼ……」 |
| 🌹 | 「…………ねぇクローチェ。あなたはどんな殿方がタイプ?」 |
| 🎼 | 「えっ? どしたの、急に」 |
| 🌹 | 「魅力も無い男の話なんてしてもしょうがないもの。楽しい話をしましょ。それで、どうなの? こういう人が良い、みたいな理想は有るのかしら」 |
| 🎼 | 「理想のタイプかぁ……う~ん、なんだろ。取り敢えず、わたしより背が高い人かな。くっついた時もちょうど良くて、怒らなくて、甘えさせてくれるような人とか」 |
| 🌹 | 「へぇ、そうなの。他には?」 |
| 🎼 | 「他は~……力持ち? すんごいムッキムキじゃなくて良いんだけど、ちょっとしたとこで力強さを感じたりとか、男らしさを感じたりするような人だと、ドキッとしちゃいそう。ぐっと急に抱き寄せられちゃったりとか~! ……あれ、これはタイプっていうか、好きな物語のシチュエーションみたいな話かも」 |
| 🌹 | 「良いじゃない、あくまで理想だもの。こういう事が好きだからそれをしてくれる男性が良い、と思うのも自由よ。あなたの場合は、そうね……既に条件は揃ってそうだけれど」 |
| 🎼 | 「へ?」 |
| 🌹 | 「なんでもないわ。また後で続きを聞かせてちょうだい。まずは攫われた娘さんを助け出さなきゃね」 |
| 🎼 | 「うん。その子も、あの人にも、笑顔になってもらわなくちゃ……!」 |
| 🌿 | 「……よし、傷の具合は大丈夫そうだ。麻痺も残ってないか?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「うん、だいじょぶ。治してくれてありがとね、アーフェン」 |
| 🌿 | 「深く刺さってなくて良かったぜ。もしそうなってたとしても、俺が絶対に完治させてやるけどよ。麻痺毒の矢を人に向けるなんて、ひっでぇ事するよなぁ……あいつらがしてた事も許せねえよ」 |
| 🎼 | 「まぁ無事に生還出来たし、捕まったし、わたしの事はだいじょぶ。似たような事が大陸の何処かで起きてるんだとしたら、無くなってほしいけど……」 |
| 🎼 | (…………) |
| 🌿 | 「……踊子、嫌になっちまったか?」 |
| 🎼 | 「ううん、それは無い。踊るのも歌うのも好き、喜んでくれる人の笑顔を見るのも好き。ただ、なんというか……もし、わたしが前にどうにか出来てたら、先にぶちのめせてたら、被害が広まったりしなかったのかな……とか、思っちゃって」 |
| 🌿 | 「……無茶しなくて良いんだって。前も、逃げるのに必死だったんだろ。今回だってスゲー怖かっただろうに、頑張って戦ってさ……本当は1回目も2回目も有っちゃいけねーんだ。ああいう奴らのせいで増える薬師の仕事だって、無い方が良い」 |
| 🎼 | 「……デリケートな話してる?」 |
| 🌿 | 「言わなくて良いやつだな、わりぃ」 |
| 🎼 | 「んーん、平気。……ね、ちょっと付き合ってくれる? あの親子とか、他の人達とか、もう怖くないよって知らせに行きたいんだ。優しいアーフェンが一緒だったら、ちょっとは笑ってもらえるんじゃないかなって」 |
| 🌿 | 「よしきた。男の俺が行っても良いのか、心配ではあるけど……力になるぜ」 |
| 🎼 | 「うん、頼りにしてる。いつだって」 |
| 📖 | 「本当に無事で良かった。キミの身に何か有ったら、もしも救出が間に合わなかったら……そう思うと、気が気でなかったよ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「へへ、心配してくれたんだ」 |
| 📖 | 「仲間の身を案じるのは当然だろう、キミ達の事を大切に思っているのだから。……矢に射られ、倒れ、連れ去られてしまうキミに手が届かなかったあの時、後悔していた。気を抜かず傍に居るべきだった、盾になっていたなら傷を負わせてしまう事も無かったろうに、と……」 |
| 🎼 | 「怪我はほら、アーフェンが治してくれたから! 跡も残ってないし麻痺も抜けたし、元気げんき!」 |
| 📖 | 「では、心の方は?」 |
| 🎼 | 「…………。……まだちょっと、震えちゃう。今度こそダメかも、ここでわたしの旅は終わりなのかな、って思った。殺されるかも、もそうだけど……やっぱり、初めては好きな人とが、良いから。……それに、ボロッボロになった姿とか見られたくないしさ~!」 |
| 📖 | 「……クローチェ君、無理に笑おうとしなくて良いんだ。感じてしまった恐怖は簡単には消えない、しっかりと癒していかねば。気丈に振る舞わなくとも、怖いと素直に吐き出してくれ」 |
| 🎼 | 「先生……」 |
| 📖 | 「何か、私にしてあげられる事は無いだろうか。望みが有れば叶えたいと思う」 |
| 🎼 | 「……なんでも、いいの?」 |
| 📖 | 「あぁ、教えてほしい。キミの支えになりたい」 |
| 🎼 | 「……それじゃあ…………くっついてても、いい?」 |
| 📖 | 「良いよ。いつものように、腕を貸せば良いかな」 |
| 🎼 | 「うん。…………落ち着く。サイラス先生にこうするの、好き」 |
| 📖 | 「光栄だ。いつでもおいで」 |
| 🎼 | 「ん。……ありがと、せんせ」 |
| 🍎 | 「……やる」 |
|---|---|
| 🎼 | 「ん? あ、リンゴだ。くれるの? めっずらし~」 |
| 🍎 | 「……要らんなら返せ」 |
| 🎼 | 「やだ食べる! 貰う! あ、でも剥いてほしいな」 |
| 🍎 | 「そのまま食えば良いだろうが……自分で剥け」 |
| 🎼 | 「テリオンの~ちょっと良いとこ見てみた~い! 器用で華麗なナイフ裁きで、リンゴの皮くるくる~凄いね一度も途切れてないね~ってなるやつ!」 |
| 🍎 | 「…………はぁ。ちょっと待ってろ」 |
| 🎼 | (あれ、本当に剥いてくれるんだ。珍しすぎる……怒られなかったし、嫌そう~ではあっても離れて行かなかった。わたしがまだちょっと元気戻ってないから、心配してくれたのかな。なんだかんだで、呼んだ時もこっち向いてくれるようになったしなぁ……) |
| 🎼 | 「……えっへへ」 |
| 🍎 | 「……なにニヤニヤしてる」 |
| 🎼 | 「テリオン、良いお兄ちゃんだなぁって」 |
| 🍎 | 「こんな図太い妹を持った覚えは無いな」 |
| 🎼 | 「ふふん、褒められた」 |
| 🍎 | 「都合良く解釈しやがって……ほら、出来たぞ」 |
| 🎼 | 「おお、皮も全部繋がってる。さっすがテリオン。いただきま~す……ん、おいし。シャクシャクだし、優しい味がする。……ワガママ聞いてくれてありがと、テリオン」 |
| 🍎 | 「…………さっさと食え」 |
| 🎼 | 「はぁ~い」 |
| 💰 | 「…………クローチェ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「……ん、なぁにトレサ」 |
| 💰 | 「無理、してない? さっき酷い事、言われちゃったし……全然笑ってないから」 |
| 🎼 | 「あ~……まぁ、うん。わたしみたいなの、歓迎されてないっぽいからねぇ。トレサはだいじょぶ? 掘り出し物とか見付かるかも~って楽しみにしてたのに、張り切ってお店突撃するような雰囲気じゃなくて残念だよね」 |
| 💰 | 「あたしは大丈夫よ。お店は、気にならないといったら嘘になるけど、追い返されても嫌だし……」 |
| 🎼 | 「確かに。見せてくださ~いって行ってもすんごい嫌そうな顔されたり、売るモンなんて無いから帰れって言われたりしたら、気持ちベッコリしちゃいそう。ちょっとくらいは売ってほしいよね、他の町へ行くにしたって補給しないと厳しいし」 |
| 💰 | 「そう、ね。うん、そうなんだけど、でも……そうじゃ、なくて」 |
| 🎼 | 「?」 |
| 💰 | 「クローチェが、心配なのよ。商人が歓迎されない事だって有ると思うし、そう簡単にあたしはへこたれないわ。だから……そうやって辛い気持ち隠して、明るく振る舞おうとしなくて、良いのよ」 |
| 🎼 | 「トレサ…………へへ、バレちゃってたか。うん。結構、しんどいかな。お父さんもお母さんも、皆を笑顔にする為に旅をしてたから、こんな事になってたなんて……色んな意味で、ショックだった。不幸の音楽、悪魔の舞……そんな事、無いのになぁ……」 |
| 💰 | 「……きっと、理由が有ると思う。だってあたし達、ご両親の曲、どれも好きよ。楽しくて賑やかなものも、穏やかでしんみりしたものも、心に元気をくれる。不幸になんか、なってないわ」 |
| 🎼 | 「…………ありがと。わたしも、大好き」 |
| 💰 | 「手、繋いでるから、ね」 |
| 🎼 | 「うん……」 |
| 🏹 | 「……クローチェ、リンデから伝言が有る」 |
|---|---|
| 🎼 | 「えっ、リンデから? わたしに?」 |
| 🏹 | 「"いつもより長く触らせてやるから、その顔をやめろ"……だそうだ。なんでもないように振る舞おうとしているのを、リンデにも見抜かれているみたいだな」 |
| 🎼 | 「……へへ、鋭いなぁ~ふたりとも。演じるの、そこそこ自信有ったんだけどな。こういう状況だと、やっぱ、誤魔化せないみたい」 |
| 🏹 | 「誤魔化そうとも、楽しくないのに笑おうともしなくて良い。お前が目指しているものは、皆を笑顔にする為に舞い歌う事だが、道化を演じる事ではないのだから。好きなものの事で、ご両親に関わる事で、胸を傷めずにいられるものか」 |
| 🎼 | 「ハンイット……リンデも、心配掛けちゃってるね。……今ね、どうしてそんな事になったの、この町で何が有ったの、が気になってしょうがないんだ。でも、調べに行くの……行きたいけど、ちょっと怖くて。……かなり、怖くて、さ」 |
| 🏹 | 「独りじゃない、わたし達が共に居る。支え合う為に、分かち合う為に、これまで旅を続けてきた。これからもそうだろう? たとえ真実を知り、辛くなってしまっても……傍に居るぞ、クローチェ」 |
| 🎼 | 「……うん」 |
| 🏹 | 「怖いのなら、わたし達が先に行って道を拓く。見たくないものであれば、背を使ってくれ。胸を貸すのだって良い。──さあ行こう、一緒に」 |
| 🎼 | 「……ん。一緒に、行く」 |
| 🎼 | 「…………」 |
|---|---|
| 🌿 | 「……クローチェ」 |
| 🎼 | 「…………病気のせいって、聞いてた。治せない病気で、仕方なく、死んじゃったって。……でも、でもさぁ……人が、わざと病気にさせたって、どうなの。お父さんも、お母さんも、掛からなくて良かった病気に、させられたって……」 |
| 🌿 | 「ああ、そんなのおかしい。自分だけが得する為に人の命を弄ぶなんて、許される事じゃねえ。お前の怒りも、悲しみも、辛いのも……全部吐き出せ、我慢すんな」 |
| 🎼 | 「アーフェン……」 |
| 🌿 | 「……くそっ、救えたかもしれねえ命が有ったってのに、沢山、有ったのに……! 薬だって、人を支配する為に使うモンじゃねえ! 人を救う為に使うんだ!! 認めさせる為に病をばら撒いて、薬が欲しけりゃ従えって縋らせて、今も脅してるとか……許せねぇよ……」 |
| 🎼 | 「……だいじょぶ、アーフェン?」 |
| 🌿 | 「……わりぃ。辛いのはお前だよな」 |
| 🎼 | 「でも、怒ってくれたのは、有り難いっていうか……わたし今、気持ちぐちゃぐちゃで、よく分かんなくて。助けてくれって言われても、すぐには決めらんない……困ってるなら、助けた方が良いんだろう、けど……」 |
| 🌿 | 「……親父さんとおふくろさんが、酷い目に遭った町を……そう簡単には受け入れられない、よな」 |
| 🎼 | 「…………」 |
| 🌿 | 「──けどな、それを承知で言うぜ。俺は薬師だ。この町に今も病が蔓延ってるなら治しに行く、皆を救ってみせる。お前の笑顔を奪ってるモンも、全部ぶっ飛ばしてやるからよ! ……ひとりで抱え込まなくて良いんだって事は、覚えといてくれよな」 |
| 🎼 | 「……うん。いつも、ありがと」 |
| 🌿 | (……早く、お前の笑顔を取り戻してやりてえ。俺がやれる事、なんだって手ぇ貸すからな) |
| ⛪ | 「クローチェさん。……少し、わたしの話を聞いていただけますか?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「……?」 |
| ⛪ | 「わたし、あまり歌うのが得意ではなかったんです。練習はしますし、神官の務めをしっかり果たしたいからと頑張りますが、それでも恥ずかしさはまだ有って……でも、あなたの歌と踊りを見ていたら、勇気を貰えました」 |
| 🎼 | 「勇気……?」 |
| ⛪ | 「はい。大切なのは楽しく歌う事、聞かせたい人達に想いを届けようとする事。照れてしまう、の恥ずかしさも有りますが、失敗したらどうしよう……と思ってしまって。下手くそって言われてしまうのが、怖かったんです」 |
| 🎼 | 「……オフィーリアは上手だし、すんごい綺麗だよ」 |
| ⛪ | 「ふふ、ありがとうございます。そう仰ってもくださるし、楽しく舞う姿から、思う事が出来たんです。たとえ失敗してしまったとしても、心から楽しもう、笑顔でいよう、と」 |
| 🎼 | 「……そっか」 |
| ⛪ | 「クローチェさん、あなたと一緒に歌いたい、踊りたい曲が、有ります。ご両親が手掛けられた、とても好きな曲が。今度、教えていただけませんか?」 |
| 🎼 | 「オフィーリアも、踊るの?」 |
| ⛪ | 「ええ。慣れていないので転んでしまうかもしれません。でも、一緒にやりたいから、楽しみたいと思うから、頑張って覚えますよ」 |
| 🎼 | 「……じゃあ、今度一緒にやろうね。楽譜見て、歌って……踊るから、踊ってもらって。一緒に楽しめたら、良いな」 |
| ⛪ | 「はい! 楽しみましょう、あなたが愛する音楽を一緒に。約束ですからね、クローチェさん」 |
| 🎼 | 「うん。……約束、ちゃんとした」 |
| 🎼 | 「……オルベリクは、この町の事、どう思う?」 |
|---|---|
| ⚔️ | 「……そうだな。あくまで俺の意見だが……きっと、美しい町だったのだろう。人々も常に笑顔で、町中に心地良い音楽が鳴り響いているような、旅人を明るく迎え入れる場だったのだと」 |
| 🎼 | 「だよね……今は、誰も笑顔じゃない。音楽は聞こえてくるけど、楽しんでない。暗くて、荒んでて……弾き手も辛そう。もう止めたい、終わりたいのに、って聞こえてくるみたいで……胸が、苦しくなる」 |
| ⚔️ | 「……止めさせてやりたいか? 誰もが俯き、怯えながら過ごしているような現状を、変えたいと思うか?」 |
| 🎼 | 「…………思いも、する。けど、まだ……分かんない。この町の人を、支配から助けたとしても……お父さんとお母さんは、帰って来ないんだよな、って……どうしても、思っちゃって」 |
| ⚔️ | 「……クローチェ」 |
| 🎼 | 「怒られちゃうかな、こんな事言ってたら」 |
| ⚔️ | 「いいや。大切に想ってくれて、愛してくれていて有難うと、そう言うだろう」 |
| 🎼 | 「……断言?」 |
| ⚔️ | 「ああ。ご両親が明るく優しく、どんな状況でも皆に笑顔を届けようと奏で舞う人達であるのだろうというのは、お前を見ていればすぐに分かる。素晴らしいご夫婦に育てられたのだとな」 |
| 🎼 | 「……へへ、褒められた」 |
| ⚔️ | 「お前がもし、やはり助けてやりたくはないと選んだのなら、その意思を尊重して此処を発とう。だが、助ける方を選んだのなら……お前に襲い掛かる障害を薙ぎ払う剣となり、共に戦うぞ」 |
| 🎼 | 「ん、……ありがと、懐でっかい騎士さま」 |
| 🎼 | 「……ね。わたしが、戦うって決めたなら。それって、仇討ちになるのかな」 |
|---|---|
| 🌹 | 「……そうとも言えるかもね。あなたのご両親の命を奪う元凶であった、この町の権力者……町の人達、訪れた旅人、助けようと駆け付けた薬師、それら大勢の命を奪った男。決して許されない、死をもって償うべきだわ」 |
| 🎼 | 「…………うん」 |
| 🌹 | 「──でも。そうは、思っていないのでしょう?」 |
| 🎼 | 「……どうして、そう思うの?」 |
| 🌹 | 「あなたと私は違うから。私はずっと、父の仇を討つ為に、復讐を果たす為に生き抜いてきた。追い掛けて、追い掛けて、この短剣を胸に突き立ててみせるのが目標だった。今更生き方を変えるのは、難しいわ」 |
| 🎼 | 「プリムロゼ……」 |
| 🌹 | 「……そう、難しいのよ。私も、あなたも。原因を知った、じゃあ復讐しよう、なんて考えには至らないでしょう? それで良いのよ。クローチェがこれまでしてきたのは、皆を笑顔にする事なんだから。奪われたから奪い返すのは、ご両親の遺作だけで良い」 |
| 🎼 | 「…………」 |
| 🌹 | 「ぶちのめす、でしょ? 手伝うわ」 |
| 🎼 | 「……うん。ぶちのめして、皆に、笑ってほしい……!」 |
| 🌹 | 「決まりね。行くわよ、最高の舞で魅せてあげる舞台へ!」 |
| 🌹 | (──そうしてあなたも笑顔になって、クローチェ) |
| 🍎 | 「答えは出たのか?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「……ん。許せないけど、放置したくはないし……許せないから、償わせたい。もうこんな事はしないように、皆が笑顔でいられるように……それから、好きじゃないから存在するのを認められないような、寂しい音楽が無いように」 |
| 🍎 | 「……そうか」 |
| 🎼 | 「テリオンも、手伝ってくれる?」 |
| 🍎 | 「嫌だと言っても、お前は無理やりにでも連行するんだろうが」 |
| 🎼 | 「あっは、分かる? だって、テリオンが居てくれると心強いんだもん。強いし、速いし、頼りになるし……いつも、助けてくれる。困ってたら、しょんぼりしてたら、話聞いてくれる。ちょっと離れた場所に居たとしても、気付いたら近くに来てくれてる。嬉しいんだよ、いつも」 |
| 🍎 | 「……身に覚えが無い事ばかりだな」 |
| 🎼 | 「へへ、誤魔化さなくて良いのに。やってない~って言うなら、わたしが勝手にそう思い込んでおくから良いよ。テリオンは、とっても頼りになる大事な仲間で、お兄ちゃんで、大好きな友達だって」 |
| 🍎 | 「…………。……なら、その友達とやらから1つ忠告しておく」 |
| 🎼 | 「ん? ……ひょあ、なにふんにょ」 |
| 🍎 | 「無理に笑うな、演じるな。戻ってない元気を作ろうとするな。……いつものアホ面でへらへら笑えるようになったら、笑え。そうなれる手伝いくらいはしてやる」 |
| 🎼 | 「……うん。そしたらまた、勢い良くドーンッ! とテリオンに突撃しに行くね!」 |
| 🍎 | 「避けても良いなら好きにしろ」 |
| 🍎 | (……お前が笑ってないと調子が狂う。さっさといつものアホ面に戻れ、クローチェ) |
| 🎼 | 「……あのね、サイラス先生。ちょっとだけ……話しても、いい?」 |
|---|---|
| 📖 | 「勿論だ。どんな話でも快く聞くよ」 |
| 🎼 | 「ありがと。……わたしがこれから、しようと思ってる事……きっと、ううん絶対、しんどいやつだと思う。止めろって、聴きたくない見たくない、消えてくれって言われちゃうかも。もしかしたら、石が飛んで来たりもするかもしれない」 |
| 📖 | 「もしもキミにそうした害が及びそうであれば、身を挺してでも守ろう」 |
| 🎼 | 「ううん、それはしなくていい。そうじゃなくてね……見守ってて、ほしいの。何が有っても、しんどくて大変でも」 |
| 📖 | 「……たとえ石を投げられてでも、やり遂げたい事が有る。そう言いたいのだね?」 |
| 🎼 | 「うん。……皆に、笑顔になってほしいんだ。全員は、無理かもしれない。誰も笑ってくれないかも、しれない。それでも……歌う事も、奏でる事も、踊る事も、楽しい事なんだよって、思い出してほしい。これまでの苦しい気持ちが全部吹き飛んじゃうくらい、楽しいものなんだよって、知ってほしい。お父さんもお母さんも、きっと願ってたと思うから。……これ、ただのワガママかなぁ?」 |
| 📖 | 「この町の住人には迷惑に思われる行為なのかもしれなくとも、私はキミの願いを支持するし、成就させてほしいとも思う。キミが人々に向ける歌と舞には、笑顔になってほしい、楽しんでほしい、と……キミの愛が込められているから。必ず、皆の心に届くだろう」 |
| 🎼 | 「え~? 絶対にそうなる、みたいなのは言いすぎだって」 |
| 📖 | 「いいや、確信している。この場は沢山の笑顔で満たされ、踊子クローチェ・ベィルという温かな光に照らされている事だろう」 |
| 🎼 | 「せんせ……」 |
| 📖 | 「──さあ、行っておいで。私は、我々はいつでも、キミの舞を楽しみにしている。応援しているよ、クローチェ君」 |
| 🎼 | 「……ありがと、せんせ。それじゃ、いってきま~っす!! 」 |