| 🎼 | 「サイラス先生にも先輩って居たんだねぇ」 |
|---|---|
| 📖 | 「そりゃあ居るさ、大勢ね。学者の中では、私はまだまだ若輩者だよ」 |
| 🎼 | 「オデット先輩ってサイラス先生とはかなりタイプ違う印象だけど、仲良さそうだったし、先生も普段とちょっと違った感じだったね。気楽だったっていうか。お手紙も厳し~いアドバイスが来てたみたいだし?」 |
| 📖 | 「はは……まぁ気負わずに話せる相手ではあるかな。付き合いが長いからというのも有るだろうが、彼女は畏まった態度よりも、くだけた接し方を好むようだから、私もあまり気を遣わずに済む。勿論、先輩として女性として敬う気持ちは忘れていないがね」 |
| 🎼 | 「先生がいつもの調子でべた褒めしたら、気持ち悪い……ってドン引き顔で言いそう」 |
| 📖 | 「…………よく分かったね」 |
| 🎼 | 「あっは、経験済だった。良いな~、わたしもオデット先輩と仲良くなりたいな、お話するの楽しそうだもん。また来た時にでも突撃しちゃおっかな?」 |
| 📖 | 「クローチェ君ならすぐ仲良くなれるのではないかな。私もこの旅が落ち着いたら報告も兼ねて訪ねたいと思っているし、良ければ紹介しよう」 |
| 🎼 | 「やった! その時はお願いね! それで仲良くなったら、サイラス先生の面白おかしいエピソードをアレコレたっくさん聞いちゃうんだ~」 |
| 📖 | 「そのようなエピソードが有ったかは分からないが……オデット先輩は博識だから、キミも沢山の事を学べると思うよ」 |
| 🎼 | 「へへ、そうだと良いな。いっぱい教わっちゃお」 |
| 🎼 | 「商売敵、ライバルかぁ……うんうん、張り合う相手が居るのも良いよね」 |
|---|---|
| 💰 | 「クローチェにも、そういうライバルの踊子って居るの?」 |
| 🎼 | 「ん~、長年の宿敵みたいな決まった人は居ないけど、ちょいちょい誰かと競ったりはしたかな。どっちがより盛り上げられるか、お客さんに気に入られるか、おひねり貰えるか……みたいな」 |
| 💰 | 「へえ~! ステージの上で競い合うの、なかなか白熱しそうね! どんな場所でも、踊り始めたらそこが舞台って感じになりそう。で、勝ったの?」 |
| 🎼 | 「勝ったり、負けたり? あ、一度すんごい惨敗した事が有ったなぁ。これはどう頑張っても勝てっこないでしょ……を悟っちゃった人が居てさ」 |
| 💰 | 「えっ、そんなにすごい踊子が? どう頑張っても勝てないなんて、そんなに踊りの技術が桁違いな人なのかしら……どんな人?」 |
| 🎼 | 「まず、サイラス先生にも負けず劣らずのイケメンで背が高くて、鍛え方もバッチリでセクシーさが有って」 |
| 💰 | 「ふむふむ」 |
| 🎼 | 「常におっかけファンの女性が何十人もついて回りながら大移動パレードしてるような人で」 |
| 💰 | 「……うん?」 |
| 🎼 | 「聞こえまくる黄色い歓声、投げられ貢がれまくる大量のリーフ、その人とファン達で占領されちゃった場所……勝負吹っ掛けられたから受けはしたけど、いやぁ~アレに勝てる人なんてそう居ないんじゃないかな? その人だけかと思ったら急に大勢のファンが現れてさ、びっくりだったよ」 |
| 💰 | 「……それは……確かに、始まる前から勝負がついてるっていうか、相手が悪すぎたっていうか……あたしも、そんな周りの圧がすごすぎる人とは勝負したくないな……」 |
| 🎼 | 「やったねオルベリク~! この調子でどんどん勝っちゃお!」 |
|---|---|
| ⚔️ | 「ああ、そのつもりだ。強敵揃いで気は抜けないがな」 |
| 🎼 | 「試合中の二人もすんごい迫力だったけどさ、実況の人も上手だよね。攻撃した時、防いだ時、回復した時、持ち堪えた時……どんな場面でも、勢い有る解説で会場を盛り上げちゃうんだから」 |
| ⚔️ | 「そうだな……模擬試合をする時などで声援を投げ掛ける者は多く居たが、こうした実況というものが聞こえながら戦う場は滅多に無い経験だ。歓声だけでも場に勢いは生まれる。だが状況を伝える事で更に盛り上がっているのが、試合中も伝わってくるな」 |
| 🎼 | 「戦ってる時って大変なのに聞こえるんだ? じゃあ、わたし達の声も聞こえてたのかな」 |
| ⚔️ | 「ああ。頑張れ、そこだ、と叫んでいるのが聞こえていた。ぶちのめせ、と言うお前の声も」 |
| 🎼 | 「あ、あはは、他のお客さんが荒っぽいからつい……いつもの感じが……」 |
| ⚔️ | 「それほどまでに熱が入っていたという事だろう。味方の声援が有るというのは頼もしい。次以降の試合でも、勢いの有るものを頼むぞ」 |
| 🎼 | 「へへん、まっかせといて!」 |
| 🎼 | 「……娼館かぁ。これから行くとこは、すんご~い悪い感じの商売させてそうだよね」 |
|---|---|
| 🌹 | 「……そうね、女は都合の良い物扱いなのでしょう。カラスの刺青が有る男が関わっているのだもの、ろくなもんじゃなさそう」 |
| 🎼 | 「なんかさ、女性が接待するお店っていうのは別に良いと思うんだけど、もっと楽しい感じのお店だったらなぁ~って思うんだ。お金が貰えればそれで良いじゃん、みたいなのじゃなくて」 |
| 🌹 | 「楽しんでる人も居るんじゃない? どうしようもない男に貢がせながら見下す女、みたいなのは」 |
| 🎼 | 「わあ、辛口評価……」 |
| 🌹 | 「……あなたの言いたい事は分かってるわ。男も女も、どちらも嫌な思いをしたりする事の無いお店ばかりだったら良いのに、でしょ。夢物語みたいな理想だけど……そうした考えが全く無い世の中よりは、良いと思う」 |
| 🎼 | 「……そっかな」 |
| 🌹 | 「というか、あなたにもそういった知識が有ったのね。てっきり、薄暗い事は何も知らない元気で初心な女の子なのかと思っていたわ」 |
| 🎼 | 「ええ~? わたしも踊子の端くれだもん、明るい事も暗~い事も知ってはいるよ。この道を進むのなら覚えておきなさい、ってお母さんが色々と教えてくれた」 |
| 🌹 | 「そう……教育熱心なお母様だったのね」 |
| 🎼 | 「ん。……まぁ、わたしが楽観的すぎたみたいで、本当はもっと暗かったんだなぁ……って分かっちゃったけど」 |
| 🌹 | 「え?」 |
| 🎼 | 「──なんでもない! ほら、そろそろ馬車が来るんじゃない? 行こっか!」 |
| 🎼 | 「テリオンが盗んだものって、いつもどうしてたの? お金にしてた?」 |
|---|---|
| 🍎 | 「まぁ、大抵はそうだな。いつまでも持ち歩くのは邪魔だし、足がついても面倒だ。さっさと手放して違う事に使った方が良い」 |
| 🎼 | 「なるほどねぇ。じゃあ今日の飲み代もそっから出来てるんだ」 |
| 🍎 | 「……それで、知ってどうする? 俺の資金繰りがろくでもない方法で、止めろと説教でもするつもりか」 |
| 🎼 | 「んーん、ただの興味。よくお酒飲みに行ってるみたいだけど、お代どうしてるのかなぁ~って。あ、わたしは踊ってたらお客さんがおひねりくれたりするから、それでごはん食べて飲んでしてる!」 |
| 🍎 | 「……盗賊の稼ぎ方と踊子の稼ぎ方を並べるな。あんたらは人を喜ばせる為、俺は自分が生きる為だけ。真っ当な生き方で得た報酬と、奪い取ったものは違う」 |
| 🎼 | 「でも、神出鬼没の凄腕盗賊って言われてるのもテリオンが頑張ってきたからじゃん。使い道とか、目的とか、そりゃあ違うだろうけど……技術を磨いてきたのは同じっていうか」 |
| 🍎 | 「…………こんな日陰者、同じなんかじゃない。仕方無くそうしてきただけだ」 |
| 🎼 | 「…………。……う~~~~ん」 |
| 🍎 | 「……なんだ、その顔は」 |
| 🎼 | 「テリオン、自己評価低すぎマン。すんごい事なのに。よし、教えてくれたお礼だ! はい詰めて~詰め込んじゃおっと~」 |
| 🍎 | 「は? おい止めろ、人の服に金をねじ込むな……!」 |
| 🌿 | 「盛況だったじゃねえか、クローチェ」 |
|---|---|
| 🎼 | 「あ、アーフェン! 今日ね~、いっぱいおひねり貰っちゃった! 気前良い人が多かったのかな? 有り難いんだけどさ」 |
| 🌿 | 「お前の歌と踊りが皆を楽しませたって事なんだろ。踊る方も見てる方も皆が笑顔でいられる、良い生業だよな」 |
| 🎼 | 「アーフェンだって患者さんを笑顔にしてるじゃん。身体も心も元気! ってする薬師もすんごい良いお仕事だよ」 |
| 🌿 | 「へへ、そっかな。だと良いな。そういや、おひねりみたいなモンって、やっぱ客の方から渡してくるのか?」 |
| 🎼 | 「そうだねぇ、良かったよ~って感想くれながら、ついでに渡される……みたいな? 旅を始めたばかりの頃は、旅費が足りなくなってきててやばい……お願いしなきゃダメかな……!? って、自分からお願いした事も結構有ったけど。お客さんの方からくれるようになったって事は、踊子として上達出来たって事なのかなぁ」 |
| 🌿 | 「だと思うぜ。良い仕事っぷりを見たら褒めたくなる、これで美味いモンでも食ってくれ、美味い酒飲んでくれよ、って奢りたくなるのと似た心境じゃねえかな。それを受け取ってくれる方も嬉しいっつーか」 |
| 🎼 | 「……それが分かってるのに、治療費と薬代はあんまり受け取らない方針なんだ?」 |
| 🌿 | 「まあまあ、俺の事は良いんだって。皆が元気になってくれりゃあさ」 |
| 🎼 | 「わたしとアーフェン、足して2で割ったらちょうど良さそう~」 |
| 🌿 | 「ははっ! かもな!」 |
| 🎼 | (……うずうず) |
|---|---|
| 🏹 | 「……どうしたクローチェ、さっきからハーゲンとリンデをじっと見ているようだが」 |
| 🎼 | 「すんごぉ~いもふもふパラダイスだなあぁって……!」 |
| 🏹 | 「え? もふもふ……あぁ、そういう事か。撫でさせてほしいなら言えば良いだろうに」 |
| 🎼 | 「リンデはさせてもらったりするけど、ハーゲンは飼い主……じゃない、相棒のザンターさんが居ないからダメじゃない? わたし知り合いじゃないし?」 |
| 🏹 | 「わたしの知り合いというか仲間なのだから、その点は問題無いだろう。ハーゲンは魔狼としての誇りは高いが、意外と気前が良い所も有るんだぞ。師匠がああだから世話を焼かされている事も度々だし……師匠の代わりに舞台上で芸を披露して大盛り上がりした、という話も聞いた事が有るな」 |
| 🎼 | 「えっ、芸が出来るの!? それってどういう……お手とおかわり? 吠えたり歌ったり? ばびゅんと駆け抜けてくるくる~っと大ジャンプ!?」 |
| 🏹 | 「大体そんな感じの話だったかな……まぁ、師匠が言っても全然やってくれないとかで、酔っ払った師匠が見た幻覚という可能性も有るんだが。わたしも実際に見た事は無いな。だが、撫でたいと頼めば応えてくれるはずなのは本当だ」 |
| 🎼 | 「えっと、ええっと……じゃあ、じゃあ……リンデ、ハーゲン、撫でさせてもらっても、良い……?」 |
| 🏹 | 「……突撃する勢いで抱き付くのはしないでくれたら、だそうだ」 |
| 🎼 | 「わ~~!! ありがとふたりとも~~~っ!!!!」 |
| 🏹 | (……ふふ、嬉しそうだ。相手をしてくれた礼と労いも兼ねて、後で多めにブラッシングしてやるとしよう) |
| 🎼 | (じっ……) |
|---|---|
| ⛪ | 「……あの、クローチェさん? わたしの顔に何か付いてます……?」 |
| 🎼 | 「ううん、オフィーリアってどんなお化粧してるのかな~って」 |
| ⛪ | 「いえ、特にしていませんよ。神に仕える身ですから、過度なお化粧などは控えた方が良いかと思いまして……よく分からない、というのも理由ではありますが」 |
| 🎼 | 「何も付けたりしてないのにいつもそんな綺麗なの!? うわ~っ羨ましい……! 良いなぁ~!」 |
| ⛪ | 「そ、そうですか? でもクローチェさんも、あまり塗ったりはしていないように見えます」 |
| 🎼 | 「軽~くね、一応は人に見せる仕事だから。いっぱいすると直すの大変だし、動き回って汗かいたらかゆ~い事になっちゃったりもするし。そっか、すっぴん美人かぁ……オフィーリアの肌が綺麗な秘訣ってなんだろ。育った環境? ごはん? 健康的な生活?」 |
| ⛪ | 「どうでしょう……フロストランドは雪国ですから、他の地方より直射日光が当たる時間は短いですね。雪で反射する紫外線には気を付けた方が良いのでしょうけれど。食事は、そうですね、なるべく偏る事が無いように食べていたような。読書などで夜更かしをしてしまう事も有りましたが、日々の生活リズムを崩さぬようにはしていたかと」 |
| 🎼 | 「ほあ~……やっぱ、これまでの積み重ねだよねぇ。わたしもその辺、気を付けていかなきゃ……」 |
| ⛪ | 「クローチェさんも十分お綺麗だと思うのに……。肌といえば、旅を続けていると調子を保ち続けるのは難しいのだな、というのを実感しています。気候の影響や日々の疲れが、少しずつ髪や肌に出てきているような……」 |
| 🎼 | 「分かる!! 梳かしても梳かしても髪が全然まとまんない~ってなる……!!」 |
| ⛪ | 「毎朝大変ですよね! 健康美を保っていけるよう、一緒に頑張りましょう……!」 |
| 🎼 | 「一緒に頑張る~……!!」 |
| 🎼 | 「エアハルト……さんって、お酒好き?」 |
|---|---|
| ⚔️ | 「酒? ……どうだったかな。部下達と飲み交わす事も度々であったから、嫌いではないと思うが」 |
| 🎼 | 「ふんふん、なら良かった」 |
| ⚔️ | 「そんな事を聞いてどうする? ……あいつに興味を持って、親しくなるきっかけに酒場へ誘うつもりでいるのか?」 |
| 🎼 | 「お酒飲むのはわたしじゃなくて、オルベリク」 |
| ⚔️ | 「……俺が、エアハルトと酒を?」 |
| 🎼 | 「仲直り……って言って良いのか分かんないけど、また話せたら良いな、今度会ったらこの話をしようかな、みたいに思う事は色々有るんでしょ? 素面だったら真面目でカタ~イ感じになりがちでも、お酒が入ったらちょっと楽しい気分でお話出来るんじゃないかなって。酔って~、笑って~、もう空になってるぞ注いでやろう~、みたいなのがさ」 |
| ⚔️ | 「……確かに、俺もあいつも、話せる場をまた設けられたとしても、色々と考えてしまって上手く話せなさそうだ。酒が入っていたら、多少は緊張が解れて会話も弾むかもしれない」 |
| 🎼 | 「うんうん! という訳で、次に会う時までに美味しいお酒のボトル確保しとこうよ! 色んな酒場で話聞いたり、お酒売ってる商人にオススメ聞いたりして、お土産だぞ~って持って行くの。こんな絶品を手に入れるなんて流石オルベリクだ、なんて言われちゃうかも?」 |
| ⚔️ | 「はは、そんな褒め方をしてくるかは分からんが……手土産を用意しておくのは良さそうだ。共に飲み交わす為の品が手元に有れば、いざその時になったら会いに行くのを躊躇ってしまう……なんて事も回避出来そうだしな」 |
| 🎼 | 「逃げちゃいそうになったら、背中ばしーんっ! と叩いてあげるよ」 |
| ⚔️ | 「そうしてくれ。あいつが普段どんな酒を飲んでいたか……思い出しながら、見繕ってみるか」 |
| 🎼 | 「メニューに無いお酒を頼むと裏メニューが出てくる……すぐ上手くいって良かったね。もし言ったやつを取り扱ってたら、普通に出されちゃってたのかな?」 |
|---|---|
| 🍎 | 「だろうな。知っている奴だけが踏み入る事の出来る闇市……後ろ暗い商売をしているのだから、合言葉を設けておくのは当然だろう」 |
| 🎼 | 「あのお酒をアレで割ってくれ~っていうの、もし店主が「おっ美味そうだな」と思ったらメニューに追加されてたりするのかなぁ? 自分じゃ思い付かないような組み合わせを言われたら、試したくなっちゃったりして」 |
| 🍎 | 「さあ……あの男が真面目に酒場を切り盛りしているなら無くはないのだろうが、どうせ隠れ蓑としてやってるだけだろ。軽率に増やして選択肢を狭めるような、合言葉を定番化させるのは避けるんじゃないか」 |
| 🎼 | 「そっかぁ、なるほど。メニューに無いけどよく頼まれてるお酒が有るなぁって普通のお客さんが知ったら、それ飲んでみたいな~って言われちゃうかもしれないもんね」 |
| 🍎 | 「……さっきから酒の話ばかりしているが、飲みたい気分なのか?」 |
| 🎼 | 「飲みたい! 一緒に行こ!」 |
| 🍎 | 「またか……あんたのお守りは面倒でしかないんだが」 |
| 🎼 | 「ええ~? 良いじゃん、テリオンと酒場行って飲むの楽しい!」 |
| 🍎 | 「俺はひたすら話し掛けられてうんざりするんだがな…………まぁ、この件が片付いたら、考えてやる」 |
| 🎼 | 「やった! よぉし、潜入がんばろ~っ!」 |
| 🎼 | 「……サイラス先生、いつもより温度高かったね」 |
|---|---|
| 📖 | 「温度? ……あぁ、そういう意味か。確かに熱くなってしまっていたかもしれないな。知識を独占しようとした彼の思想には賛同出来ないし、人質を取るなどという許してはならない行為も有ったから」 |
| 🎼 | 「あの子、テレーズ嬢……追放に関わってもいたんでしょ。でも良い子そう……サイラス先生が旅立ってからず~っと心配してたんだろうし、危ない目に遭うみたいなの知って一人で遠くまで来ちゃったの、すんごいよね。愛がデカい」 |
| 📖 | 「彼女の学問への情熱は素晴らしいよ。まだまだ学びたい事が有るからと、一介の教師である私の身を案じてくれて……あの想いに応えるべく、私も彼女に様々な事を教えなくては。手紙に添える課題も沢山考えなくてはね」 |
| 🎼 | 「……………………」 |
| 📖 | 「……おや、クローチェ君?」 |
| 🎼 | 「にぶちん大魔王」 |
| 📖 | 「え? …………にぶちん、大魔王……とは」 |
| 🎼 | 「はぁ~~~~、ほんっっっっとにぶちん!! どうして分っかんないかなぁ~!? 違うよ! 想いってそうじゃないよ! 大好きなのはそっちだけじゃないんだってば!!」 |
| 📖 | 「う、うん? えっと……? 何の事を言っているのか……」 |
| 🎼 | 「もお~~~これだからサイラス・オルブライトは! 超絶鈍感フラグクラッシャー女心何それ全く分かりませんマンは! 自分の身がどうなろうとも好きな人を助けたいっていうのすら分かんないの!? 有り得ない!! せんせーもあんな大声出すくらい大事に思ってるのに!! にぶちん大魔王!!!!」 |
| 📖 | 「えっ? えっ? な、何をそんなに怒って……」 |
| 🎼 | 「知らないっ!! ばーかばぁーーーっかにぶちん大魔王~っ!!!!」 |
| 📖 | 「だからその、にぶちん大魔王とは一体……あっ、クローチェ君? 待ってくれクローチェ君! 大魔王はどういう意味なのか気になるのだが……!?」 |
| 🎼 | 「うっみ~、うっみ~、きらっきら~でざっぶざぶ~~~」 |
|---|---|
| ⛪ | 「ご機嫌ですね、クローチェさん」 |
| 🎼 | 「海の方に来るとテンション上がらない!? さらさら~って聞こえる波の音とか、海鳥の賑やかな鳴き声とか、太陽の光が当たってすんごいキラキラな青い海と、同じくらいに広がってる青い空、もくもくの白い雲……聞いてても見てても楽しいし、意欲を刺激されるっていうかさ~!」 |
| ⛪ | 「何か新しいテーマを思い付きました? 例えば、海辺でのロマンチックな物語とか……クローチェさんが好まれるものだと、夕暮れの海で出会ったあの人ともう一度会いたい、というような女性視点の歌などが有りそうですけど」 |
| 🎼 | 「それも良いな~! でもね、今わたしの頭に有るのはソレ系じゃなくてね」 |
| ⛪ | 「あら、どんなのですか?」 |
| 🎼 | 「カニくんとワカメちゃん!」 |
| ⛪ | 「……え? カニくんと、ワカメちゃん、ですか?」 |
| 🎼 | 「横歩きで頑張って旅してきたカニくんが、ざざ~んと砂浜に流されてたワカメちゃんと出会ってさ。心配して保護しようとするんだけど、つるんってしちゃうし、なかなか上手く運べなくて……あぁ、君はどんな声で話すんだろう、このハサミでは君の手を掴めないし、力を入れすぎたらチョキンしてしまうかもしれない……! みたいな葛藤をしながら、どんな子なのか恋い焦がれちゃうようなやつ」 |
| ⛪ | 「それは、また……斬新な物語ですね……でも、小さい子にも好まれるような歌も多いクローチェさんらしくもあります。ただ……もしかして、お腹空いてます?」 |
| 🎼 | 「海鮮料理、食べたい」 |
| ⛪ | 「ふふっ、では食事にしましょうか。海辺の町で綺麗なものを見聞きして、美味しいものを頂いて、もっと元気いっぱいになっちゃいましょう」 |
| 🌹 | 「……ねぇ。クローチェは、初恋の事って、覚えてる?」 |
|---|---|
| 🎼 | 「初恋? かぁ……初恋……してたのかな、どうかな。分かんないかも」 |
| 🌹 | 「あら、そうなの? 小さい頃からご両親に連れられて舞っていたのなら、あなたに魅せられた男の子との出会いも有りそうなのに」 |
| 🎼 | 「お客さんというか、お友達というか、話し掛けてくれた子は居たよ。でも特にそういうのは無かったような……同世代の男の子だと、一緒に遊ぼ! のノリで遊んでた気がする」 |
| 🌹 | 「じゃあ、年上の男性? 褒めてくれるような人とか」 |
| 🎼 | 「ん~? 良くしてくれたお兄さんも居たけど、恋してたかというと……あ、でも褒めてもらえたのは嬉しかったな。上手だったよ、可愛かった、って頭撫でてもらったりしてさ」 |
| 🌹 | 「ふふ……そうなの。あなたは昔から、年上の男性に甘やかしてもらうのが好きだったのね。ちょっと分かるわ、それ。……私も、嬉しかったな……」 |
| 🎼 | 「……プリムロゼ」 |
| 🌹 | 「……もし、これまで初恋をしていなくて……これから、出会えたのなら。素直になって、心から楽しんで、あなたの想いを大事にするのよ」 |
| 🎼 | 「……昔の初恋だって、もう終わっちゃったものだとしても、まるごと無かった事にはしなくて良いんじゃないかな。お兄さんに褒めてもらえたの嬉しかった、もっと頑張りたくなった……そういうの、素敵な思い出だよ」 |
| 🌹 | 「…………。……そう、かしらね……」 |
| 🎼 | 「……えいっ」 |
| 🌹 | 「やだ、なぁに? 私にくっついてもしょうがないでしょうに」 |
| 🎼 | 「好きな人にくっつくのは男女関係ないで~す、大好きだからくっつくんで~す」 |
| 🌹 | 「……ありがと」 |
| 🏹 | 「クローチェ、大丈夫──ではなさそうだな」 |
|---|---|
| 🎼 | 「さ、むい……リンデ、ぬくい……」 |
| 🏹 | 「温かく自慢の毛並みではあるが、そうされると動けないと困っているぞ。出来れば、もう少し緩めてやってくれないか?」 |
| 🎼 | 「うう~……? ごめんねリンデ、嫌がる事はしちゃダメだよね…………ふ、──ふぇっくし!」 |
| 🏹 | 「あぁほら、こっちの上着も羽織っていろ。この辺りは特に寒いからな……もしもっと北へ向かう事になったなら、厳しそうだ。果たして行けるのやら……」 |
| 🎼 | 「やだぁ、置いてかないで~……」 |
| 🏹 | 「置いて行ったりなどしないさ、安心しろ。だが事前に準備しておかなければな。一度シ・ワルキに戻って、毛皮を取ってきた方が良いかもしれない」 |
| 🎼 | 「毛皮……ハンイットがしてる、もこもこのやつ?」 |
| 🏹 | 「ああ。フロストランドでの依頼も度々有るし、狩りの際に身に着ける温かい毛皮をいくつか用意してあるんだ。クローチェは寒さに弱いようだから、そうだな……全身を覆えるくらいの量が要るか。いっそフロストベアーの毛皮をまるごと着ても良いかもしれない」 |
| 🎼 | 「まるごとクマ…………どうも、クマーチェ・ベィルです」 |
| 🏹 | 「ふふ、クマーチェか、可愛いな。まぁ冗談はさておき、お前専用の毛皮を用意するのは考えておこう。これからも共に行くのだから」 |
| 🎼 | 「ううう、ハンイット頼もしすぎ~! 美味しいあったかごはんもください!」 |
| 🏹 | 「はいはい。後で温かいシチューでも作ろうか」 |
| 💰 | 「船長同士の熱い友情、大冒険とすごいお宝! やっぱりロマンが有るわよね~!」 |
|---|---|
| 🎼 | 「ロマン有る有る! 港町に住んでると、そういった冒険譚ってよく聞こえてきてた?」 |
| 💰 | 「そうね、この前の航海ではこんな事が有ったんだ~って話す乗組員はよく居たわ。商船の出入りが殆どといっても色んな船が来るから、たまに海賊船が来て騒ぎになったり……あ、海賊だからって全員が悪い人な訳じゃないのは皆も分かってるわよ? レオンさんみたいに元海賊の良い人も居れば、お宝探しが好きなだけで人に迷惑は掛けない、を信条にしてる人も居るもの」 |
| 🎼 | 「盗賊だって良い人いっぱい居るもんね、盗むのは悪い人達からだけ~みたいな義賊とかさ」 |
| 💰 | 「そうそう、イメージが全てじゃないから。……イメージ……お宝探しも、持ち主は居ないみたいだから持って来ちゃった、みたいに言われると、ロマンが無くなっちゃうな」 |
| 🎼 | 「ロマン、大事」 |
| 💰 | 「大事、ロマン。そうだ、クローチェが考えた海に関連した歌と踊りって有る?」 |
| 🎼 | 「海だと、そうだなぁ……定番の冒険譚とか、海の生き物のお話とか。あと外せないのは人魚かな!」 |
| 💰 | 「人魚! 素敵よね~! きっと綺麗な人達ばっかりなんだろうし、身に着けてる物や鱗とかにも良い価値が付くわよ。人魚が流す涙は輝く宝石になる、みたいな噂話も好き。もし本当に居るのなら、一度お目にかかってみたいものだわ……」 |
| 🎼 | 「その装飾品と鱗、買うわ! って商談始めるの? 歌声を披露しまくるショーをやってみない!? ってお仕事斡旋しちゃう?」 |
| 💰 | 「えっ? いやいや、流石にそれは失礼っていうか、相手の都合を考えてなさすぎっていうか……あぁでも珍しくて話題になりそうだし、お友達になれたらちょっとくらいはお願いしたいような気も……」 |
| 🎼 | 「あっは、素直な商人~」 |
| 🎼 | 「オーゲンには絶対負けない! って言うなら、何か勝算でも有るの?」 |
|---|---|
| 🌿 | 「いやぁ、そいつはまだ見付かってないけどよ……でも気持ちだけは負けちゃいらんねえって思うぜ。具体的な案はこれからでも、勢いが無きゃ始まんねーし」 |
| 🎼 | 「じゃあさ、すんご~い回復効果の有るお薬作れるようになるとか! あの人も他の薬師も作った事が無いようなやつ!」 |
| 🌿 | 「っつっても、万能薬みたいな薬なんて眉唾モンだし、スゲー回復効果の有る薬なんてそうそう作れねえよ。俺自身の腕前もそうだけど……まず材料が手に入らねぇとな。貴重な薬草なんてのは、人が滅多に踏み入らないような所にしか生えてなさそうだ」 |
| 🎼 | 「う~ん、採りに行くのも大変か……」 |
| 🌿 | 「まぁでも、あんまり人が作らなくて、それが人の役に立つ薬だったら、作り方を覚えたい気はするけどな」 |
| 🎼 | 「あんまり見ないやつ…………惚れ薬とか、どう?」 |
| 🌿 | 「惚れ薬ぃ~? それこそ眉唾モンだろ、見た奴を好きになるとかよ」 |
| 🎼 | 「需要は有るんじゃないかな~って。どうしてもあの人が良い! って恋をしてる人とか、両想いだけど告白する勇気が出なくて~な人とかが、イイ感じに使えたりしない?」 |
| 🌿 | 「勇気が出ない奴の背中を押してやる薬ってのは悪くねえけどよお……催眠に似た効果を人に与えるって事だろ? 望んでない相手に使われて騒ぎになっても困るし、飲んでも無害である保証は出来ない。薬師としてオススメ出来ねーよ、無しだ無し」 |
| 🎼 | 「そっかぁ~……患者さんの為のお薬、だもんね」 |
| 🌿 | 「……応援しようとしてくれてんのは分かってるよ、ありがとな。俺は俺なりに、腕前上げられるように頑張るぜ」 |
| 🎼 | 「──はいアーフェン、お水」 |
|---|---|
| 🌿 | 「……おお、悪ぃなクローチェ。……ん? この水、何か入ってんな? 味がする」 |
| 🎼 | 「気付いた? 前にアーフェンが教えてくれた二日酔いに効くやつ、それにちょっと足してみたんだ。サッパリしてて美味しいでしょ」 |
| 🌿 | 「ん、美味い。こりゃ良いわ……つい飲みすぎちまったし疲れにも効くぜ、ありがとよ」 |
| 🎼 | 「おかわりいっぱい有るよ! お腹たっぽたぽになるくらい!」 |
| 🌿 | 「いやいや、そんなには飲めねえって。気持ちだけ貰っとくぜ」 |
| 🎼 | 「……貰ってくれる?」 |
| 🌿 | 「え?」 |
| 🎼 | 「それ作れたの、アーフェンが教えてくれたから、なんだからね。薬草の見た目も効果も、こうすり潰すと良いぜってやり方も、アーフェンがじっくりバッチリ教えてくれたからだよ。これまでやってきた事、ちゃあんと役に立ってるんだから」 |
| 🌿 | 「……そっか。悪ぃな、励ましてもらっちまって」 |
| 🎼 | 「ちがぁう。それじゃないでしょ、言うの」 |
| 🌿 | 「そうだな……ありがとよ、クローチェ。励ましてくれて」 |
| 🎼 | 「ふふん、それで良し。アーフェンにはいつもお世話になりまくってるんだから、このくらいはさせてよね。必要な薬草だって採りに行くお手伝いするよ! びしばし叩き込んでパシらせちゃって!」 |
| 🌿 | 「へへ、助かるぜ。そんじゃ少しだけ頼んじまおうかな。えーと……これとこれと、あとこれと……ついでにこっちも有ると良いかな」 |
| 🎼 | 「……割と頼むね」 |
| 🌿 | 「手伝ってくれんだろ? 難しけりゃ前言撤回しても構わないぜ」 |
| 🎼 | 「ううん、行って来る! 図鑑借りるね! えっと~、これとこれとこれと……あれっ、この葉っぱ似てて分かりにくいな? ええ~っとぉ……」 |
| 🌿 | 「…………気ぃ遣わせちまったな。さぁて、もうひと踏ん張りすっかあ!」 |
| 🎼 | 「……うう、しゃむい…………ふぇっくしゅ!」 |
|---|---|
| 🍎 | 「……寒いなら室内で待っていたらどうだ。無理に付き合う必要も無いだろ」 |
| 🎼 | 「やだ、一緒に行く。テリオンがしんどくても頑張ってるのに、ぬくぬくしてる訳には……それにほら、くっついてたらちょっとはマシになるじゃん?」 |
| 🍎 | 「さっきからくしゃみばかりして震えてる奴が言っても説得力無いな。……正直、引っ付かれてるのも動きづらいんだが。俺は今、指名手配されているんだぞ? 奴らに見付かったらどうする」 |
| 🎼 | 「その時は頑張って逃げる、だいじょぶ」 |
| 🍎 | 「…………」 |
| 🎼 | 「信用されてない目だ! でもさ、見付かるかもって言うけど今は平気なの、こうしてくっついてるからじゃないかな~とも思うんですね、わたしは。指名手配中の男が外で恋人とべったりしながら歩いてるなんて、盗賊団は誰も思わないだろうし」 |
| 🍎 | 「恋人になった覚えも無いが……まぁ確かに、横に居られると目立つお前が今は逆に、目を逸らす役割を果たしている可能性も多少は有るかもな。あいつも、俺は一人で隠れながら動くと踏んで命令しただろう」 |
| 🎼 | 「ふふん、役に立ってる。という訳で、くっついてるのは続行という事で~」 |
| 🍎 | 「……ただ引っ付くのを許されたいだけじゃないか?」 |
| 🎼 | 「半分はそう! ……もう半分は、心配だから、横に居たい。皆だって、心配だし力になりたいから、テリオンの近くに居るんだよ。もし見付かっちゃっても、先に行かせる為の時間稼ぎ役くらいは出来るしさ」 |
| 🍎 | 「…………。……本当にお人好しな連中だ」 |
| 🎼 | 「嫌い?」 |
| 🍎 | 「別に。お前らとの付き合いも長くなってきたし、考えは俺も理解しているつもりだ。どうせ拒否した所で遠慮無く押し掛けて来るんだろ。……信頼してるさ」 |
| 🎼 | 「やったあ大好き認定だ~!!」 |
| 🍎 | 「フン、前向きな奴め……横に居たいなら居させてやっても良い。その代わり、凍えて動けなかったなんて失態は勘弁だからな、クローチェ」 |
| 🎼 | 「へへっ、ちゃあんとテリオンについて行くよ!」 |
| ⛪ | 「……リアナ、わたしが必ず……」 |
|---|---|
| 🎼 | 「……ね、ね、オフィーリア。姉妹の居る生活って、どんな感じ?」 |
| ⛪ | 「え? どんな感じ……ですか?」 |
| 🎼 | 「ほらわたし、ひとりっ子だからさ。友達は居ても、きょうだいが居る生活っていうのは経験無いし、実際と想像はちょっと違うのかな~って。そういえば聞いてみた事も無かったじゃん? どっちがお姉ちゃん役だったの?」 |
| ⛪ | 「どちらがどちらを、と決まってはいなかったと思います。わたしが姉のように接する事も有れば、リアナがわたしを導いてくれる優しい姉のようであった事も、沢山有りました。お互いが姉であり、妹であり……共に神官としての職務を全うするべく日々研鑽に励む、友であり……かけがえのない、大切な人。わたし達は、そんな家族でした」 |
| 🎼 | 「でした?」 |
| ⛪ | 「……いいえ、今も変わらず、そうだと思っています。だからこそ、唆されてしまったとはいえ道を外れようとしている彼女を、正しき道へ導く……それが今、わたしの成すべき事。やりたいと思っている事です」 |
| 🎼 | 「ん、そう決めてるならだいじょぶ! わたし達も手伝うし、わっる~い奴なんてぶちのめしちゃお! シュッシュッ!」 |
| ⛪ | 「ふふ、頼もしい。リアナもきっと、クローチェさんの歌と踊りを好きになると思うんです。人々の笑顔のために舞う、その姿を見ていたら……わたし達が父さまから受け継いだ想いが見えなくなっていても、また見えるようになるはずだから」 |
| 🎼 | 「オフィーリアにも、何かが見えなくなっちゃってた時……元気、あげられてた?」 |
| ⛪ | 「ええ。悲しい時にも、元気な時にも、クローチェさんからは笑顔溢れる時間をたっぷりと頂いていますよ」 |
| 🎼 | 「えっへへ、そっか……嬉しいな。どんどんやっちゃうし、オフィーリアとリアナとも一緒に歌って踊って~が出来たら良いなぁ」 |
| ⛪ | 「はい。やりましょうね、是非とも」 |
| ⛪ | (──今行くわ、リアナ。あなたに伝えたい事が、共に取り組みたい事が、本当に沢山有るのよ) |
| 🎼 | 「こ~んなにたっくさんの商人が集まってるの、すんごいよねぇ……! 売り物も大量! あっちもこっちも見た事が無いようなものばっかり! 一日じゃ回りきれなさそう……!」 |
|---|---|
| 💰 | 「本当そうよね、大競売が終わってからもすごい賑わってると思うわ! これから会場へ行く人達も足を止めちゃうような呼び込みをして、見てもらいながら需要を把握して……終わって出て来る頃に品物を入れ替えて売る、って戦略の店も有るはずよ」 |
| 🎼 | 「そういう狙いも分かっちゃうんだ?」 |
| 💰 | 「商人としての勘、かな? ちょっとだけ見て回った感じ、出してる物だけで売り切る勝負をしてる店も有れば、まだまだこれだけじゃありませんよって隠し玉を用意してそうな店も有ったの。大儲け出来そうな機会を逃す手は無いって様々な品を仕入れておいて、今が売り時! を見定めてバッチリ売り込む……うんうん、勉強になるわ~」 |
| 🎼 | 「トレサは此処でお店出さないの? その鞄も色々と詰め込んであるんだし、稼げそうだけど」 |
| 💰 | 「う~ん、やってみたい気持ちは有るけど、今回は秘石エルドライトを持って大競売に参加する、を目標にしてたからね……飛び入りの出店が可能なのか確認しなきゃだし、可能でも手続きに時間が掛かるようだったら見送りかしら。まぁでも、此処で沢山仕入れて他の町で売る事も出来るし、大競売が開かれるのも今年だけじゃないから、得られるものは多いわよ」 |
| 🎼 | 「ふんふん、今日は下見も兼ねた参加って事だね。……時に、未来の大商人トレサ嬢よ」 |
| 💰 | 「な、なに? いきなり変な呼び方しちゃって……」 |
| 🎼 | 「わたしね、さっきから気になって仕方無いものが有るんだよね。あの辺のお化粧道具とか、アクセサリーとか、あっちの食べ物エリアだって見て回りたい……でもアレもコレもって気軽に買ってたら、すぐ散財しちゃいそうでしょ? だからさ、予算決めて! 計算して! ここまでなら使い込んでもだいじょぶって判断して~!!」 |
| 💰 | 「ええっ? それは別に、構わないけど……お財布の中身と相談にはなるから、予算が少なすぎるって文句を言われるのは困るわよ?」 |
| 🎼 | 「言わない! 約束する! ほら、ねっねっ、お店いっぱい回りた~いっ!!」 |
| 💰 | 「もう、クローチェったら……これじゃあどっちが年上でお姉ちゃんなのか分からないわね」 |
| 🎼 | 「取り敢えず、顔と腹に一発ずつ入れるよね」 |
|---|---|
| 🌹 | 「……何の話?」 |
| 🎼 | 「あいつだよ! ほんっと腹立つ~!! プリムロゼの嫌がる事ばっかする性悪男! 甘くて優し~い言葉を掛けて油断させてブスッした事もそうだし、何この劇!? 全っ然面白くない! コレを演らされてる大劇場だって可哀想だしさぁ~~~あんな奴にあげる恋心なんて無くて良いよ勿体無い! ポイしてポイ!!」 |
| 🌹 | 「この前と言ってる事が真逆に変わってるじゃないの……」 |
| 🎼 | 「ここまで酷い男だとは思わなかったからだよ! 乙女の純情を弄んで楽しみやがって~っ! 絶対ぶちのめす! プリムロゼが慈悲を与える間も無くぶちのめすっ!!」 |
| 🌹 | 「……大丈夫よ、慈悲なんて与えてやらないから。あの男に復讐する為に生きてきた、それが漸く叶うのだから……此処で立ち止まらず、最後まで進むわ。こんなに酷い劇を見せて私を惑わそうとしたって無駄よ。……気分は、良くないけど」 |
| 🎼 | 「腹パン何回まで入れて良い!?」 |
| 🌹 | 「聞いてる? ……でもありがと。皆もあなたも、私の為に怒ってくれるのね」 |
| 🌹 | (…………) |
| 🌹 | 「……今は目の前の事に集中しなきゃいけないから、本当はこんな事を考えるのは、いけないのだろうけど……ねぇ、この復讐が終わったら、私と踊ってくれる?」 |
| 🎼 | 「んっ? それは勿論、たっぷり付き合うけど……?」 |
| 🌹 | 「実を言うとね、羨ましかったの、クローチェの事。一緒に旅をするようになって、沢山の人達を笑顔にしたのを見て……私も踊りで大勢を魅せてきたけど、皆で楽しく元気良く、とても温かな世界で生きるあなたと、私が生きてきた暗い世界……こんなにも違うのね、って、何度も思った」 |
| 🎼 | 「…………傷付けちゃってた?」 |
| 🌹 | 「いいえ、違うわ。憧れたのよ。私もいつか、こんな風に皆と踊れたら良いのにな、って。……あなたにも、辛い事が有った。けれど、こうして再び立ち上がって、明るく元気に、私を励ましてくれる……私もいつか、わだかまりが無くなった人生を歩み始めたら……変われるかな?」 |
| 🎼 | 「……プリムロゼの踊りは、プリムロゼは! いつもわたしに、皆に、元気と勇気と希望を与えてくれてるよ!」 |
| 🌹 | 「……本当?」 |
| 🎼 | 「だから、ぶちのめして、踊ったりもして、も~~~っと笑顔になろ! 一緒に、さ!」 |
| 🌹 | 「……ええ。一緒に、笑いましょうね」 |
| 🎼 | 「……あっつい、あつぅい…………うう~~、あそこのお水で泳ぎたい……」 |
|---|---|
| 🏹 | 「こら、気持ちは分かるが泳ぐのは駄目だぞ? この町に通る大切な水源なのだから」 |
| 🎼 | 「分かってるけどぉ……砂漠、太陽暑い、砂ぱさぱさ、肌べたべた……寒いとこも無理だけど、暑すぎのとこも辛すぎる……」 |
| 🏹 | 「元々はフラットランドの出身と言っていたな。穏やかな気候の地で過ごす事が多いと、こうした厳しい地に来るとより辛いだろう……わたし達も慣れるまで毎度時間が掛かるよ」 |
| 🎼 | 「服、全部脱いでい~い?」 |
| 🏹 | 「やめなさい。……まったく、クローチェは寒い地だけでなく暑い地でも普段以上に子供っぽくなるんだな……世話を焼かせる」 |
| 🎼 | 「いつもありがと~、おかあさ~ん……」 |
| 🏹 | 「せめて姉にしてもらいたいな……ほら、リンデと一緒に風通しの良い日陰で休んでいろ。復調してもらわないと、これから行く所での戦闘も満足に出来なくなってしまうからな」 |
| 🎼 | 「遺跡の中、だっけ。陽は当たらなくても、風通し良くなさそう……そんなとこで石にされてる人達、しんどいよね。ザンターさんも助けなきゃだし、倒さなきゃだし……んん、頑張らないと。休んで、元気もうちょい取り戻すね」 |
| 🏹 | 「そうしてくれると助かる。お前達が力を貸してくれるからこそ、わたしも安心して立ち回れているのだから。ふたりとも頼りにしているぞ、リンデ、クローチェ」 |
| 🎼 | 「へへ、ハンイットは乗せちゃうのも上手いな~? ね、リンデ。……そうだ、サイラス先生とアーフェンに氷出してもらおっか! 削って、ひんやり~を触れるようにして……よし、お願いしてこよ! おぉ~い二人ともどこ~?」 |
| 🏹 | 「やれやれ、元気が無いんだか元気なんだか……決戦前の緊張感も緩んでしまいそうだ。……まぁ、笑顔にしてもらえているから良いか。ふふ……」 |
| 🎼 | 「うう……この町、酷い事がいっぱい有る~……見せしめとか、脅迫とか、誰も笑顔にならないのに。今の領主の人、そんな事やってて楽しいのかなぁ?」 |
|---|---|
| ⚔️ | 「さてな……楽しいからやっている、というのも理由の一つなんじゃないのか。そういった輩は世に多い。己の私欲を満たす為、地位を盤石のものとする為に他者を支配し、命を奪う事すら躊躇わないどころか斬り捨てる事を愉しんでいるだけの狂人……此処の領主は多少知恵が働くようだが、やっている事は賊と変わらん。早く対処しないとな」 |
| 🎼 | 「なんでそういう人達って、自分の事しか考えないんだろう……皆で協力しあいながら笑顔で居られるようにする方が、絶対良いのに」 |
| ⚔️ | 「……ああ。お前のように皆と手を取り合う事を選ぶような者ばかりだったなら、無駄な血も流れずに済んだだろう。だが、現実はそうもいかない……どの国にも、命を奪う事に愉悦を感じる者は居る。……そうした輩から民を守る剣を、持ち続けたいものだ」 |
| 🎼 | 「…………オルベリクさ、おっきいよねぇ」 |
| ⚔️ | 「ん? 何だ突然……確かに俺は、お前より身体は大きいが」 |
| 🎼 | 「身体じゃなくて、心の話。根っからの剣士というか騎士さまなんだなぁ、を改めて思ったというか。誰かを守りたい、守り抜く、っていうの、結構大変な事じゃない? それでも口にした通りにやろうとするの、こう……上手く言えないんだけど、すんごい事だな~って、思うよ」 |
| ⚔️ | 「……願っていても、思うようにはいかない事も多々有る。守り抜けなかった事も。だが、悔いて後ろを向いてばかりではいけない……この旅を経て得たものが有るからこそ、より思うのだ。我が剣は、守るべきものの為に振るうもの。今後もそうしていきたい、と」 |
| 🎼 | 「つまり、この町を解放して皆を笑顔にしたくてうずうずしてる! って事だね」 |
| ⚔️ | 「フッ、そうだな。こんな苦しみばかりの場より、皆が笑って過ごせる場の方が良い。その為に動かなければな。──さあ、行動するとしよう」 |
| 🎼 | 「うんうん、一緒に頑張ろ!」 |
| 📖 | 「──この文字、及び単語が表す意味は、此方の書と照らし合わせると……やはりそうだ、この一節と合致している。であれば、此処に綴られているものと、あの壁画に記された内容は、私の仮説だと……」 |
|---|---|
| 🎼 | 「…………サイラス、せんせ。言ってた本、これで合ってる……かな?」 |
| 📖 | 「──ああ、有難うクローチェ君。こう乱雑に置かれていると探すのも一苦労だ、助かるよ。そうだ、聞いてくれるかい? 謎が少し解き明かせそうなんだ! 全容を把握するにはまだまだ照らし合わせなければならないものばかりだが、この場には手掛かりが多数集められているからね、私の持つ知識だけでは辿り着けなかった答えを得られそうだ」 |
| 🎼 | 「……うん、先生がイキイキわっくわくしてるの、分かるよ。いつもの、一つ一つ謎を解いていくのが楽しい感じ、伝わってくるから」 |
| 📖 | 「追い求めていた真実の一端に漸く触れられたからね。目の前に謎が有ると解き明かしたくて没頭してしまうのは、よく有る事だが……こうも未知のものばかりであると、自分でも抑止法が分からなくなる程に、つい熱を入れてしまうよ。……あっ、あちらにも少し目を通しておこう。より見識が深まるかもしれない──」 |
| 🎼 | 「…………サイラス先生の、さ。夢って、なあに?」 |
| 📖 | 「──うん? 私の夢? ……夢、か……それはやはり、学問をより多くの人々に伝え広める事、かな。先の戦いを経て、また、この原本を少し解読して……知識を独占してはいけない、正しい知識を後世に伝えていく事が必要だと、強く思ったんだ。あの壁画についても意味を理解出来たら、私の考えを後押しするような結果を得られるかもしれない……そんな予感がするよ。知る事が楽しいから調べたくて堪らない、というのも有るのだがね」 |
| 🎼 | 「……そっか。…………せんせ、眩しい、ね」 |
| 📖 | 「──え? すまない、何か言ったかい?」 |
| 🎼 | 「んーん、なんでもない。……ほら、気になって気になってしょうがないんでしょ? 早く行きなよ、壁画のとこ。後から見に行くからさ」 |
| 📖 | 「そうだね、では一足先に向かっているよ。どんな事が描かれているのか判明したら、キミにもしっかりと教えよう」 |
| 🎼 | 「ん、分かった」 |
| 🎼 | (──予感、か。サイラス先生、この後きっと、すんごい事を決めちゃうんだろうな。さっきの戦いで口にした言葉も、沢山……未来の事を、考えてた。すごかった。……遠かった。一緒に居たけど、見てるとこ……全然違ったなって、実感した。ああして夢中で解き明かして、周りの事なんて見えなくなっちゃうくらいに前へ突き進んで、それで……) |
| 🎼 | 「……いつか、手が届かなくなる人、だ」 |