| 🌹 | 「──サイラス、ちょっと良いかしら? 今から抜き打ちテストを行います」 |
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| 📖 | 「テスト? それは構わないが……して、何についての知識を試すんだい?」 |
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| 🌹 | 「この前あなた達に説いた、女心について。もう忘れた、何も向上してはいない、なんて言わせないわよ」 |
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| 📖 | 「ああ……先日キミが熱弁してくれた話か……なら私だけでなく、テリオンもこの場に居ないといけないのでは?」 |
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| 🌹 | 「探したけど捕まらなかったのよね。盗賊の勘でも働いたのかしら……まぁ彼には改めて問題を出しに行くわ、今はあなただけで良しとしましょう。準備は良い?」
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|---|
| 📖 | (何かを察して逃げたのだろうな……) |
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| 📖 | 「……分かった、受けて立とう。学者として知識を試されているのだから、逃げる訳にはいかないさ」 |
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| 🌹 | 「良い心掛けね、始めるわよ。……第一問。クローチェはオレンジ色が好き」 |
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| 📖 | 「えっ? クローチェ君に関しての問題なのか?」 |
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| 🌹 | 「そうよ。ほら、答えて」 |
|---|
| 📖 | 「ええと、うん。これは簡単だね、答えはYESだ。身に付けている衣装は勿論、服や装飾品を選ぶ際もオレンジ色の品を手に取っている事が多い。また、果物のオレンジも好んでおり、飲み物も柑橘系をよく頼んでいるよ」 |
|---|
| 🌹 | 「正解。じゃあ第二問。クローチェのお母様は音楽家である」 |
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| 📖 | 「彼女の母君は踊子であり、音楽家は父君だね。よって答えはNOだ。お二方から学び受け継いだ技術が、クローチェ君の在り方や夢を形作ったのだと聞いている」 |
|---|
| 🌹 | 「正解よ。この辺りは基本問題だから答えられて当然ね。それじゃあ次、第三問。──あなたに対して苦手意識を持っている」 |
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| 📖 | 「! ……それは…………あの一件から、彼女は私を避けるようになってしまった。別離の道を行くのは止めてくれたようだが、これまで有ったような触れ合いや接し方は極端に減り、私と目が合うと逃げられてばかりだ。……苦手意識は、有るのではないかな」 |
|---|
| 🌹 | 「──はい、失格。不合格ね」 |
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| 📖 | 「え?」 |
|---|
| 🌹 | 「あなたを避けてしまうのは、好きだからよ。苦手だからじゃない、寧ろ逆。一緒に居たい、でも自分はあなたに相応しくない、傍に居たいけれど離れなきゃ駄目……そうした自身の気持ちに振り回されて、つい逃げちゃうの。近くに居たら甘えてしまうから、そうしないように逃げているだけ。……本当は甘えたくて仕方無いのに、ね」 |
|---|
| 📖 | 「……そう、か……まだまだ、私は彼女の事を理解出来ていないらしい。しっかりと考えてキミに応えたい、と伝えたのにな。不安にさせてしまわぬよう、もっと努めなくては」 |
|---|
| 🌹 | 「本当にね。……ほら、そこで隠れてこっちを見てるから、捕まえてお話でもしてきなさいな」 |
|---|
| 🎼 | 「っ!! え、ちょ、なんでバラすの!?」 |
|---|
| 🌹 | 「さぁサイラス、次は合格出来るように、クローチェの女心をもっと理解してきなさい。逃がしちゃ駄目よ」 |
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| 📖 | 「あ、あぁ、分かった。追試もよろしく頼むよ。……クローチェ君、ちょっと良いかい?」 |
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| 🎼 | 「よ、良くない! じゃっ!」 |
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| 📖 | 「あっ、待って! 逃げないでくれ、クローチェ君!」 |
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| 🎼 | 「やだ~~~っ!」 |
|---|
| 🌹 | 「……やれやれ。前途多難な人達なんだから……さっさと安心させてよね、バカ」 |
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| 🎼 | 「ダメだぁ~っ!! ぜんっぜんイイ感じの歌詞が浮かばない! メロディもこれで本当に良いのか分かんなくなってきた……!」 |
|---|
| ⛪ | 「あらあら……スランプでしょうか、クローチェさん」 |
|---|
| 🏹 | 「つい先日は良い曲が作れた、と嬉しそうにしていたのにな。生み出す者の喜びと苦しみというやつか……少し気分転換したらどうだ? ほら、果実水でも飲んで」 |
|---|
| 🎼 | 「ん~……お酒じゃないんだ?」 |
|---|
| 🏹 | 「酒の力を借りるのも一つの手だろうが、根を詰めすぎてあまり休んでいないのではないか? そんな時は飲まない方が良い」 |
|---|
| ⛪ | 「それに、酔って眠くなってしまったら字が書けなくなってしまいますよ? 折角浮かんだフレーズを書き留めておこうとしても、クローチェさん、ふにゃふにゃ喋ってて聞き取れない事も有りますから……」 |
|---|
| 🏹 | 「代筆してやりたくとも、何を言っているのか分からなければ協力しようもないからな」 |
|---|
| 🎼 | 「うぐ、いつもご迷惑をお掛けしてます……」 |
|---|
| 🏹 | 「迷惑だとは思っていないさ。頼ってもらえているのだろう? まぁ、初めて言われた時には驚いたがな」 |
|---|
| ⛪ | 「突然クローチェさんに名前を呼ばれたかと思えば、”言うから書いといて!”と言ってきて、閃いた言葉を呟きながら寝てしまいましたからね」 |
|---|
| 🏹 | 「急に言われても紙とペンなんて無いぞ、と大急ぎでサイラスやトレサから借りたりもしたな」 |
|---|
| 🎼 | 「だあって、捻り出そうとしても全然出てこないのに、眠い時には浮かんでくるフレーズとか有るんだもん……自分で書こうとしても、ふにゃふにゃミミズ~になっちゃって読めなかったりするし。起きたら全部忘れちゃってるの、勿体無いしさ」 |
|---|
| ⛪ | 「寝落ちてしまう前に浮かんだものは、起きて考えている時に浮かぶものより採用率が高いのですか?」 |
|---|
| 🎼 | 「どうかなぁ、その時どんな曲にしようとしてるかによるかも。いつか使えるかもしれないしなぁ~って一応残してあるし、皆に書いてもらったやつも纏めてあるけど……こういうやり方、変かな? だいじょぶかな?」 |
|---|
| 🏹 | 「世の音楽家達がどんな風に曲作りをしているのかは分からないが、お前はお前のやり方を貫いて良いと思うぞ。少しでも助けになっているのなら、わたし達も嬉しい。完成した歌と舞も見せてもらえるしな」 |
|---|
| ⛪ | 「はい、お願いされるのも含めて楽しませていただいてます。いつでもお力になりますからね、クローチェさん」 |
|---|
| 🎼 | 「うう、二人ともありがと……! よし、これも頑張って完成させちゃって、いっちばんに披露しに行くからね!」 |
|---|
| 🏹 | 「楽しみにしている。あぁでも、ちゃんと身体も休めておくんだぞ?」 |
|---|
| ⛪ | 「美味しい果実水、もう一杯飲みます?」 |
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| 🎼 | 「うむ、寝る! 飲む!」 |
|---|
| 🌿 | 「テリオ~ン、ちゃあんと飲んでるかぁ~?」 |
|---|
| 🍎 | 「……飲んでる」 |
|---|
| 🎼 | 「テェ~リオ~ン! もっといっぱい飲も~! お酒、おいし~い!」 |
|---|
| 🌿 | 「酒、うめぇな~!」 |
|---|
| 🍎 | 「あんたらはそろそろ飲むのを止めろ……」 |
|---|
| 🎼 | 「ええ~? こんなにおいし~いのに……終わるの、もったいなぁいじゃん~」 |
|---|
| 🌿 | 「そうだそうだ、もったいねえ! うめぇもんはたぁっぷり堪能しないとなあ!」 |
|---|
| 🎼 | 「アーフェン、いいこと言う~!」 |
|---|
| 🌿 | 「だろぉ~?」 |
|---|
| 🍎 | 「…………はぁ。こんなに酔いやがるなら混ざってやるんじゃなかったな……折角の酒だっていうのに、気持ち良く酔えやしない。置いて帰るか」 |
|---|
| 🎼 | 「やぁだ、ここに居て~! いっしょに居てよぉ、テリオン~~~」 |
|---|
| 🌿 | 「お前が居なくなったら寂しいだろうがよお~?」 |
|---|
| 🍎 | 「居ても居なくても変わらんだろうが……この一杯を飲み終えたら帰るからな」 |
|---|
| 🎼 | 「変わるもん。テリオン居ると、うれしい。すき。たのしい、だぁいすき」 |
|---|
| 🍎 | 「……は?」 |
|---|
| 🌿 | 「俺達はなぁ、おめえにゃいっつも感謝してんだぜえ? 口も目付きもわりぃ、態度もわりぃけど、なんだかんだで助けてくれるし、付き合ってくれてる事が多いしさあ? 頼りにしてんだぜ、ほぉんとによ」 |
|---|
| 🎼 | 「だぁから、いっしょがいいの。たのしいの、うれしいの、いっぱぁいやって~、テリオンとぉ思い出……たくさん、つくってぇ……」 |
|---|
| 🌿 | 「数え切れねえくらい、楽しいことして……酒もたぁっぷり、のんでえ……よろこんで、くれりゃあ……」 |
|---|
| 🍎 | 「…………」 |
|---|
| 🌿 | 「……ぐお~……」 |
|---|
| 🎼 | 「……すやぁ……」 |
|---|
| 🍎 | 「…………やれやれ、落ちたか。酔っ払い共め……あんたらの荷物を見てやってる俺の身にもなれってんだ」 |
|---|
| 🍎 | (……どうせ目が冷めたら覚えてないんだろうが。…………まぁ、こいつらと飲む酒は……不味くはないが、な) |
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| 🌹 | 「……オルベリク、ちょっと良い?」 |
|---|
| ⚔️ | 「ん? どうした」 |
|---|
| 🌹 | 「あそこの殿方なんだけど……さっきからこっちをチラチラ見ているのよね。でも、相手をしてあげる気分じゃなくて……隣に居てくれない?」 |
|---|
| ⚔️ | 「居るのは構わんが……お前と話したいから見ているのではないのか?」 |
|---|
| 🌹 | 「お話するだけ、楽しくお酒を飲むだけ、で良いのなら私も悪い気はしないわ。でも……分かっちゃうのよね、どんな事を求められているのか……どんな欲を、向けられているのか。だったら初めから相手をするつもりなんて無いわよ、って示しておいた方が、面倒事も起きなくて済むでしょ?」 |
|---|
| ⚔️ | 「……そう、か……分かった、俺が守ろう。いくらでも盾にしてくれ」 |
|---|
| 🌹 | 「ふふ、ありがと。……助かるわ、本当に」 |
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| 🎼 | 「……あれっ、プリムロゼがオルベリクにくっついてる。なになに、そういう気分?」 |
|---|
| 🌹 | 「そういう気分、かしらね」 |
|---|
| ⚔️ | 「虫避けだ、深い意味は無い」 |
|---|
| 🌹 | 「あら、無いの?」 |
|---|
| ⚔️ | 「…………」 |
|---|
| 🎼 | 「あっは、なんとなく分かっちゃった。じゃ、わたしも一緒に居させてもらお~っと」 |
|---|
| ⚔️ | 「お前も、他の客の事で困っているのか?」 |
|---|
| 🎼 | 「まぁ、ちょっとだけ? しょうがないんだけどね~」 |
|---|
| 🌹 | 「魅力的すぎるのも困ったものよね。私達、そんな安い女じゃないんだから……クローチェも彼にくっついていれば良いんじゃない?」 |
|---|
| 🎼 | 「おお、なるほど。お邪魔しま~っす」 |
|---|
| ⚔️ | 「……両手が塞がるのは、困るのだが」 |
|---|
| 🎼 | 「注いであげる!」 |
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| 🌹 | 「飲ませてもあげるわよ?」 |
|---|
| ⚔️ | 「いや、それは、勘弁してくれ……」 |
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| 🌹 | 「ふふっ、冗談よ。そう固くならなくても良いのに」 |
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| 🎼 | 「オルベリクは~硬派な騎士さまだから~」 |
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| 🌹 | 「でも、そこが素敵でもあるのよね」 |
|---|
| 🎼 | 「そうそう!」 |
|---|
| ⚔️ | (……これも二人の為だ。盾として、己の務めを果たし…………なんとか耐え抜こう……) |
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| 💰 | 「ふわあ~……! お肉の良い香り!」 |
|---|
| 🎼 | 「ごっはん! ごっはん! ハンイット~の~美っ味しいごっはん~!」 |
|---|
| 🏹 | 「ふふ、ちょうど出来上がった所だ。ほら、食べてくれ」 |
|---|
| 🎼 | 「いっただっきま~すっ!」 |
|---|
| 💰 | 「いただきます! ……んん~! おいひぃ~っ! やっぱりハンイットさんの手料理は最高ね!!」 |
|---|
| 🎼 | 「おかわり有る!?」 |
|---|
| 🏹 | 「有るから安心しろ、まずは目の前の皿を平らげてからな。お前達はいつも美味しそうに食べてくれるから、わたしも作り甲斐が有るよ」 |
|---|
| 💰 | 「だって本当に美味しいんだもん~! はぁ、このお肉柔らかくて口の中で溶けちゃうし、甘辛いソースも最高だわ……毎日食べたい……」 |
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| 🎼 | 「分っかる~! ハンイットのごはん食べたら、他の料理が物足りなく思えちゃうよねぇ」 |
|---|
| 🏹 | 「それは言い過ぎじゃないか? 料理の腕もそこそこ自信は有るが、やはり本職の料理人には敵わないさ。最高の味を作り出す為に人生を賭してきた人は特に、一品一品に込める味の深みが違う……真似しようと思っても簡単にはいかないな」 |
|---|
| 🎼 | 「ザンターさんのごはんも美味しい?」 |
|---|
| 🏹 | 「ああ、狩った獲物を上手く活用する事も狩人の務めだ。我々は命を頂いて生きている。角も爪も毛皮も肉も、全て無駄にする事無く使わせてもらわねば。まぁ、師匠は酒が飲みたいからとわたしが作ってばかりだがな」 |
|---|
| 💰 | 「狩人としての誇りとお師匠さんへの想いが、ハンイットさんの料理の腕を高めてきたのね……納得だわ。んん……それじゃあ軽率に誘えないかなぁ」 |
|---|
| 🏹 | 「ん? わたしに頼みたい事でも有ったのか?」 |
|---|
| 💰 | 「ちょっと前に話したのはご破談になっちゃったじゃない? でもやっぱり諦められないっていうか……他にも一緒にやれる事が無いかな、って考えてたの。食材を自分で狩って美味しく料理してお客さんに振る舞う、森のごはん処! みたいなのどうかなぁ~って」 |
|---|
| 🎼 | 「!? 行きたい! 通う!」 |
|---|
| 💰 | 「じゃあクローチェが踊るステージも併設しましょ! プリムロゼさんも誘って、二人の舞でお客さんを楽しませれば、料理も踊りも最高なごはん処が出来上がるはず……!」 |
|---|
| 🎼 | 「やるやる~! ついでにごはんの割引券も欲しい!」 |
|---|
| 💰 | 「それも良いわね! 常連さんに配って長く通ってもらわなくちゃ!」 |
|---|
| 🏹 | 「盛り上がっている所に水を差してすまないが、獲物を追って暫く帰れない事も有るから、わたしが食材の仕入れも料理もやるというのは難しいぞ。もし店を開いたとしても……休業日の方が多く、安定した売上は見込めないのではないかな」 |
|---|
| 💰 | 「う、うう~ん……そっかぁ……ぐぬぬ……」 |
|---|
| 🏹 | 「だが、そういった提案は嬉しいよ。ありがとうな」 |
|---|
| 🎼 | 「……あ、お店がダメなら、大会みたいなの開くのは? ハンイット以外にも狩人や料理人を呼んで、森のモリモリごはん選手権!」 |
|---|
| 💰 | 「なるほどぉ……! 大きな催しで人を呼べば各方面への宣伝にもなるし、皆が楽しめそうだし、稼ぎが沢山有れば武闘大会と肩を並べられるようにも……? よし、考えてみましょ! という訳でハンイットさん、おかわり! もっと味の研究もしなきゃ!」 |
|---|
| 🎼 | 「あっずるい! わたしもおかわり~!」 |
|---|
| 🏹 | 「はいはい、持って来るよ。ふふ……二人が揃うと、森も賑やかになりそうだ」 |
|---|
| 🌹 | 「もう、さっきの男……私の誘いを断るなんて失礼しちゃうわ。どこかの大魔王様じゃないんだから、魅力が分からない訳じゃないでしょうに」 |
|---|
| 🎼 | 「あっは、にぶちん居ないのに言われてる~」 |
|---|
| ⛪ | 「きっと、何か外せないご用事が有ったのだと思います! プリムロゼさんは、とっても美しくて素敵な女性ですよ……!」 |
|---|
| 🌹 | 「ありがとオフィーリア、励ましてくれて。もしくは、そうね……好みが違ったのかしら。クローチェみたいな元気な子の誘いだったら、受けたのかもしれないわね」 |
|---|
| 🎼 | 「どうだろ? 遊ぼ~って言っても断られてたかも……オフィーリアみたいな清楚系がどストライクかもしれないよ?」 |
|---|
| ⛪ | 「えっ? わ、わたし、ですか?」 |
|---|
| 🌹 | 「まぁ神官様に導いてもらえるなら、断る人なんてそうそう居ないのでしょうけど……あ、そうだ。ねぇオフィーリア、あなたも男を誘う術を身に付けてみない?」 |
|---|
| ⛪ | 「ええぇっ!?」 |
|---|
| 🎼 | 「面白そう! オフィーリア、一緒に歌ったり踊ったりもしてくれるようになったし、踊子の格好をしてお誘いしてみたらイケるんじゃないかな~?」 |
|---|
| ⛪ | 「そっ、そんな、わたしは聖職者ですので! 踊子の格好は、戦いの場ではする事も有りますけど……そ、それで男性に声を掛けるのは、勇気が……!」 |
|---|
| 🌹 | 「でも将来好きな男が出来た時、誘い掛けるスキルは必要になってくるんじゃない? あなたみたいに純情そうな子が、二人きりの時に甘く誘ってきたりしたら……男はそのギャップにコロッと落ちるんじゃないかしら」 |
|---|
| ⛪ | 「あ、甘さと、ギャップ、ですか……?」 |
|---|
| 🎼 | 「甘えてくれたら嬉しい、そういう人って結構居るんだよ」 |
|---|
| 🌹 | 「ほら、想像してみて? 手や腕、胸板に触れながら、真っ直ぐに瞳を見つめながら呼び掛けて、身体を寄せて……囁くの」 |
|---|
| 🎼 | 「わたしと一緒に、踊りませんか? 忘れられない、熱い夜を……」 |
|---|
| ⛪ | 「えっ、えっ、ええ……っ? えっと、わたしは、そんな大胆な事は……」 |
|---|
| 🎼 | 「ね、こうやって……くっついて、指を絡めて繋いだりして」 |
|---|
| 🌹 | 「肌を密着させて、意識してもらうの。私はあなただけを見ている。だからあなたも、私をじっくり見て……って」 |
|---|
| ⛪ | 「あ、あわ、あわわわわ……っわ、わたし、わたしにはそんなっ、そんな事…………~~っ、 も、もう許してくださぁい……!!」 |
|---|
| 🎼 | 「ありゃりゃ、真っ赤に爆発しちゃった」 |
|---|
| 🌹 | 「う~ん、からかいすぎたかしら。この子に女の技を覚えさせるのは、まだまだ先になりそうね」 |
|---|
| 🏹 | 「クローチェ、明日はわたしが馬車の地図を担当する事になった。荷台でサイラスとゆっくり話すと良い」 |
|---|
| 🎼 | 「へっ!? な、なんでいきなり? いつもは地図係、先生じゃん……歩いてる時も、乗ってる時も……」 |
|---|
| ⚔️ | 「たまには違う者がやるのも気分転換になるだろう。それに明日はウッドランド地方に入る。森の中はハンイットに頼んだ方が良いと俺も思うし、お前達はもう少し腰を据えて話すべきだ」 |
|---|
| 🎼 | 「えっ、えっ、じゃあ歩く! わたし歩くから、他の皆でゆっくりしてもらって……」 |
|---|
| 🏹 | 「ふむ、二人で歩くのも悪くはないな。だがその場合、逸れてしまわぬようサイラスに手を繋いでおいてもらう事になるが……」 |
|---|
| 🎼 | 「だからなんで先生とセットなの~っ!? だ、だいじょぶだよ、すんごい距離取って逸れたりなんかしないし、そうお馬さん! お馬さんにニンジンあげてるから!」 |
|---|
| ⚔️ | 「多く与えるのは馬に負担を掛けるだけだぞ。適量を適したタイミングで与え、共に進む仲間として大切にしてやらねば」 |
|---|
| 🎼 | 「大切にしてるって~!」 |
|---|
| 🏹 | 「ならば彼にも、いつも大切に想っているという気持ちを伝えてやれ」 |
|---|
| 🎼 | 「うっ…………う、うう~? 二人とも、なんかグイグイ押してくる……わたし、そんなにダメダメな振る舞いしてる?」 |
|---|
| 🏹 | 「ダメダメというか……まぁ、逃げ回りすぎのようには思うが。ただわたし達は、心配しているだけだよ」 |
|---|
| 🎼 | 「……心配……」 |
|---|
| ⚔️ | 「サイラスも零していたぞ。”もっと話が出来れば良いと思うのに、避けられてしまう事が多くて寂しいな”……と。お前がどんな考えを抱いて行動に出たかは聞いているが……愛しているなら、逃げ回らずに向き合ってやれ」 |
|---|
| 🎼 | 「……オルベリクの口から、愛とか出て来た」 |
|---|
| ⚔️ | 「む……まぁ、滅多に言わん事だが」 |
|---|
| 🏹 | 「迷惑でしかないのならすまない。しかし、お前達が仲良く楽しそうに笑っていると、見ているこちらも胸が温かくなるんだ。恋愛というものは経験が無くてすまないが……彼の選択はきっとクローチェを不幸にはしないし、彼自身も不幸にはならないものではないかと、わたしは思うぞ」 |
|---|
| 🎼 | 「……ハンイット、オルベリク…………んーん、迷惑なんかじゃ、ないよ。心配してくれてありがと。……荷台、で、逃げずに、頑張る……から、あの、リンデ横に居てほしい。もふもふ、したい」 |
|---|
| 🏹 | 「ふふ、分かった。伝えておこう。…………強引すぎるお節介だったかな」 |
|---|
| ⚔️ | 「いいや……こうした支え方もきっと、守る術の一つだろう」 |
|---|
| 🌹 | 「前々から思っていたのだけど……あなた達って似てるわよね」 |
|---|
| 🎼 | 「え、そう?」 |
|---|
| 🍎 | 「こいつとどこが似てるんだ……」 |
|---|
| 🎼 | 「嫌がられた!!」 |
|---|
| 🌹 | 「そんな声出さないの。外見や性格とかそういう所じゃないわよ、性質というか……演じるという事において、近い所が有るような気がして」 |
|---|
| 🎼 | 「ああ~、そういう似てる? テリオンって演技派盗賊だもんね。急に営業スマイルが出てくるとびびるけど、なりきる事で相手に入り込む~っていうか注目させようとするのは、似てるかなぁ? 普段はこ~んなにムスッと顔なのにね」 |
|---|
| 🍎 | 「踊りや人を誘う時以外はアホ面な奴に言われたくないな」 |
|---|
| 🎼 | 「ひどい!!」 |
|---|
| 🌹 | 「はいはい、仲良しなのは分かったから。仕事を円滑に進める為、歌と踊りに惹き込ませる為……必要だと思った時、それがサッと出来るのは凄いと思うわ。私も踊りや誘う時に演じる事は有るけど、私の魅力を引き出す為の演技だから、別人になりきるっていうのはしないのよね。誰かに演技指導を受けたの?」 |
|---|
| 🎼 | 「わたしはお母さんだよ。お母さんも物語をより良く伝えて惹き込む為に~って色んな役を演じながら舞い歌ってたんだ。女踊子としての世渡り術、みたいなのも一応教わった」 |
|---|
| 🌹 | 「演者としても女としても、お母様は素晴らしい方だったのね。テリオンはどう?」 |
|---|
| 🍎 | 「人の下につくように見えるか? 行き交う奴らを見て盗んで身に付けた、それだけだ。……演技も必要だと思う時にしかやらんぞ」 |
|---|
| 🌹 | 「あら、先手を打たれちゃった。折角だから色々な人を演じてもらおうと思ったのに」 |
|---|
| 🎼 | 「今が必要な時! 見~せて!」 |
|---|
| 🍎 | 「断る」 |
|---|
| 🎼 | 「ええ~。……あ、そうだ。ね、ね、プリムロゼ。こしょこしょ……」 |
|---|
| 🌹 | 「……ふむふむ……面白そうね、それ」 |
|---|
| 🍎 | 「……おい、何を企んでる」 |
|---|
| 🎼 | 「よぉしテリオン、セクシー踊子お兄ちゃんの出番で~す!」 |
|---|
| 🍎 | 「は?」 |
|---|
| 🌹 | 「ちょっと私達と一稼ぎしましょ? 見て盗むあなたは技の覚えも早いし、踊りも磨けば更に光るのは間違い無いわ。私とクローチェとテリオン、三人で男も女も魅了しちゃいましょうよ」 |
|---|
| 🎼 | 「ふふん、いつもはアホでも演じるのはバッチリ決めちゃうんだから。お客さんをキュンとさせちゃう技、たっぷり叩き込むから覚悟しててね?」 |
|---|
| 🍎 | 「いや、何を勝手に……待て、おい引き摺るな! 両側を固めるな! くそっ、こいつらのどこにこんな馬鹿力が……離せ踊子共……!!」 |
|---|
| 🌿 | 「旦那の剣って意外と細身だよな。もっとこう、ぶっとい大剣みたいなのも似合いそうな体格してるのに」 |
|---|
| 🎼 | 「ね。おっきい人がおっきい剣で、ドーン! ズバーッ! ってやるの見た事有るし、オルベリクだったら軽々扱って道を斬り開く~みたいにやれそうだけど」 |
|---|
| ⚔️ | 「武器の話か。そうだな……初めからそういった得物を手にしていたなら有り得たかもしれんが、大きければ良いというものでもない。人から賜った、長年共に戦ってきたから手に馴染んでいる、騎士団が定めた武器を扱わねば……そうした理由も有るが、己の剣技を最大限に活かせるのはこういった形だった、というだけだ」 |
|---|
| 🎼 | 「ほほう。振り回されるだけでちゃんと戦えない武器じゃダメ、おっきい身体してても威力がどうこうより、バッチリ戦える武器の方が良い……って事?」 |
|---|
| ⚔️ | 「そういう事だ。人が武器を選ぶだけでなく、武器の方から人を選ぶ事も有る。合致しなければ、守れるものも守れない……それでは無意味だからな。己に合う武器で一番の威力を発揮出来るのが最良の選択だろう」 |
|---|
| 🌿 | 「なるほどなぁ。確かに俺もそこそこ背と筋肉は有る方だと思ってるけど、デカすぎる斧なんてのは使いづらいし運びづれえ~ってなりそうだし、なんとなく分かるぜ。外見の迫力が増しても足を引っ張るだけならなぁ……変な事聞いてわりぃな」 |
|---|
| ⚔️ | 「いや、興味深い内容だ。これまで多くの相手と戦ってきたが、手にしていた武器は多種多様であったし、面白い得物を手にしていた者も居た。……実際には扱いきれんだろうが、もしああいった武器を手にしたならどんな戦い方になるのか、考えてみるのも楽しそうだ」 |
|---|
| 🎼 | 「おっ、考えるのはタダだよ! どんどん考えちゃお!」 |
|---|
| 🌿 | 「持ってみたい武器か、そうだなぁ……両刃の斧! とか強そうだよな。ぶんぶん振り回したり投げ付けたり、両側に刃が有りゃ持ち方を変えても問題無さそうだしよ」 |
|---|
| ⚔️ | 「ふむ、普段はこちらの刃で戦うが咄嗟に逆の刃で攻撃も出来る、臨機応変の戦いが可能になりそうだ。悪くない」 |
|---|
| 🌿 | 「クローチェは何か有るか? こういう武器だったら使ってみたいかな~って思うようなモン」 |
|---|
| 🎼 | 「ん~、わたしはいつも短剣だからなぁ。強そうな武器……あ、なんかこう、刃がいっぱい付いてて鞭みたいになってる剣とか?」 |
|---|
| ⚔️ | 「ほう、鞭のような剣か……扱いは難しそうだが、中距離からの攻撃も可能になるだろうし、踊りながら戦うのも画になりそうだ」 |
|---|
| 🎼 | 「そうそれ! 踊りながらひゅんひゅんって使えたら格好良いんだろうな~って。まぁでも、うっかり変なとこ当てちゃいそうな気もするんだけど……」 |
|---|
| 🌿 | 「おいおい、うっかりで仲間を巻き込まないでくれよ? 旦那はどうだい、そういうもしもの武器を持つなら」 |
|---|
| ⚔️ | 「俺が持つとしたら……お前達が言っていた大剣に挑んでみるか。側面が広ければ盾として用いながら守る事も出来そうだし、襲い来る敵を一度で薙ぎ払ってみせよう」 |
|---|
| 🌿 | 「よっ、オルベリクの旦那! 期待に応えながら敵も一掃! かっけえ~!!」 |
|---|
| 🎼 | 「頼りになりまくる騎士さま、最っ高~! いっぱい守って~!!」 |
|---|
| ⚔️ | 「フッ、大袈裟な奴らだ。……たまにはこういうもしもの話をしてみるのも、酒の肴にちょうど良いな」 |
|---|
| 💰 | 「……ほらクローチェ、酒場に着いたわよ! しっかりして!」 |
|---|
| 🎼 | 「……おなかすいた」 |
|---|
| 📖 | 「すぐに注文するよ、もう少しの辛抱だ」 |
|---|
| 🎼 | 「おなかすいた……」 |
|---|
| 💰 | 「ダメだわ、お腹が空きすぎて同じ事しか言わなくなってる……先生、適当に頼んじゃって良いよね?」 |
|---|
| 📖 | 「ああ、お願いするよ。……クローチェ君、ここまで無理をしなくて良いのに。何か胃に入れれば少しは落ち着くだろうが、まさかこんな事になっているとは……トレサ君が気付いてくれなければどうなっていたか」 |
|---|
| 💰 | 「宿に戻ったら部屋で倒れててびっくりしたわ……珍しく曲作りに苦戦してたみたいだし、踊りの振り付けも決まらなかったんじゃないかなぁ。なんとか仕上げなきゃ! って食事もせずにひたすら取り組んでたんでしょうね」 |
|---|
| 📖 | 「行き詰まっていたならいつでも相談に乗るというのに……どうしても自分だけで作り上げたかったのだろうか。私もつい没頭すると寝食を忘れてしまう事が有るから、強く叱るのは躊躇われるのだがね」 |
|---|
| 💰 | 「先生もちゃんと寝て食べなきゃダメよ? ……あっ、来た! クローチェ、ごはん来たわよ! 食べて食べて!」 |
|---|
| 🎼 | 「おなかすいた…………」 |
|---|
| 💰 | 「うう~んエンドレス……!」 |
|---|
| 📖 | 「仕方無い、食べさせてあげよう。クローチェ君、食事だよ。……はい、あ~ん」 |
|---|
| 💰 | 「!!」 |
|---|
| 🎼 | 「……ごはん?」 |
|---|
| 📖 | 「そうだよ、口を開けてごらん。あ~ん……」 |
|---|
| 🎼 | 「……あ~、ん……んむ」 |
|---|
| 📖 | 「よし、良い子だ。さぁ、もう一口。あ~ん」 |
|---|
| 🎼 | 「あ~ん……もぐ、もきゅ…………おいひぃ」 |
|---|
| 📖 | 「それは良かった。まだまだ沢山有るからね」 |
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| 💰 | (……お、おお……緊急事態とはいえ、サイラス先生の方からあ~んをするだなんて……! ちょっとクローチェ、早く正気を取り戻した方が良いわよ! 今すごい良い事が起きてるんだって……!!) |
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| 🎼 | 「……あ~ん」 |
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| 📖 | 「はい。……うむ、ちゃんと食べてくれているね。もう少し食べれば元気になってくれるだろう」 |
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| 💰 | 「……ね、ねぇ、先生? 前はクローチェからあ~んをされても戸惑ってた事が多かったのに、今は平気になったのね?」 |
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| 📖 | 「そういえば、出会いたての頃はそんな反応をしてしまっていたな。初めに彼女から一口を向けられたり強請られたりした時は、そういったやり取りをした事が無かったから戸惑っていたが……クローチェ君はこういう子なのだな、と分かってからは抵抗も無くなっていったよ。キミが不在の時だっただろうか、何度か一口を分け合ったりもしていたんだ」 |
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| 💰 | 「へぇ~、そうだったの……」 |
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| 💰 | (……クローチェ、サイラス先生が覚えてくれたのはきっと、何度も何度も繰り返してたからよ。最近はクローチェが逃げちゃうから、あんまりあ~んはしてないみたいだけど……良かったわね) |
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| 📖 | 「もう一口いかがかな?」 |
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| 🎼 | 「んぁ~」 |
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| 💰 | (…………でも、な~んか……いつものように引っ付いてても、今は腹ぺこで正気じゃないからかなぁ? 恋人のようなやり取り、というより……雛に餌をあげてるように見えちゃうな……) |
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| 🌿 | 「あのばあさん、喜んでくれて良かったよなぁ。やっぱさ、困ってる人が居たらほっとけねえよ」 |
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| ⛪ | 「ええ、お孫さんと無事にお会い出来て良かったです。もしわたし達があの道を進んでいなかったら、あのまま困っていたかもしれませんし……これも聖火のお導きなのでしょう」 |
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| 🎼 | 「わたし達、これまでも色んな人のお手伝いしてきたよね。落とし物を探しに行ったり、人を連れて行ったり、知りたかった事を教えに行ったり……皆の役に立てて良かったなぁ~! って思うよ」 |
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| 🌿 | 「だな。喜んでくれるとこっちも嬉しくなるし、人の笑顔は最高の薬になるぜ。また頑張ろう! って気持ちになるっていうかさ」 |
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| 🎼 | 「うんうん!」 |
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| ⛪ | 「そういえば、わたし達ってその辺り、少し似ていますよね。アーフェンさんは沢山の人を助けたい、病に掛かってしまった人々を治したいという志を持っていらっしゃいますし、クローチェさんは皆さんを笑顔にしたい、と大陸中を回っていらっしゃいます。わたしも神官として、悩める人々を導きたい、お力になりたい、と思っていますから」 |
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| 🌿 | 「確かに、俺達似てるよな。クローチェは両親が遺した楽譜を集めるって目的も有るけど、沢山のお客さんを笑顔にしたいっていう気持ちを持ってる。俺もオフィーリアも、相手が笑顔になってくれたら嬉しい……へへ、良いチームじゃねえか」 |
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| 🎼 | 「二人は癒し手さんだから、怪我しても倒れちゃってもバッチリ治してくれるし……わたしとオフィーリアでサポートしたり、アーフェンとわたしで突撃したり……うん、イイ感じのバランスな気がする」 |
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| 🌿 | 「皆に技を教わったりもしたしな。他の武器を扱うのもだいぶ慣れてきたし、三人で分担すりゃあ……大抵の事は出来ちまいそうな気がしてきたな! ははっ、そいつは流石に言い過ぎか?」 |
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| ⛪ | 「でも、出来る事が増えたのは確かですよね。一緒なら、支え合いながらどんな困難をも乗り越えていけそうな……そんな安心感が有ります。もっと多くの人々のお力になれるんじゃないかな、って」 |
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| 🎼 | 「皆をお助けし隊、みたいなの組んじゃう?」 |
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| 🌿 | 「おっ、良いねえ。組んじまうか!」 |
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| 🎼 | 「じゃあじゃあ、こういう掛け声みたいなのをさ……」 |
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| 🌿 | 「ふんふん」 |
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| ⛪ | 「なるほど……こほん。では──てつ!」 |
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| 🎼 | 「だう!」 |
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| 🌿 | 「ぜ!」 |
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| ⛪ | 「…………ちょっと、照れちゃいますね」 |
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| 🎼 | 「ありゃ、ダメ?」 |
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| 🌿 | 「まぁでも、俺達の息がピッタリってのは分かったよな。へへっ、本当に何でもやれちまいそうな気がするわ」 |
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| 💰 | 「今日の目玉商品は……これよ! 職人が丹精込めて作り上げたブレスレット! メインの宝石だけでなく周りの小さな宝石も一つ一つ丁寧に磨かれてあって、煌びやかな物が好きな貴族のご婦人の目に留まること間違い無し!」 |
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| 🍎 | 「……フッ、甘いな。ただジャラジャラと付いているだけじゃ、見栄を張りたい強欲女にしか需要が無いぞ。値付けにも文句を言ってきそうだ」 |
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| 💰 | 「うっ、揉めるのは困る……じゃ、じゃあテリオンだったら、もっと良い品を見付けられるっていうの?」 |
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| 🍎 | 「そうだな……あぁ、さっき見掛けた貴族の女がしていた指輪なんて良さそうだ。宝石の数は一つだけだが、上質なものを選び抜かれた事が一目で分かる輝きをしていたし、軸となる金属もそこらの安物じゃない。目立たず、しかし存在感が有り、目を惹く装飾品……上品さを重視する界隈だ、需要ならあの指輪の方が有るだろうな」 |
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| 💰 | 「デザインとしてはシンプルだけど、一級品で作り上げられた指輪なのね……! き、気になる……」 |
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| 🍎 | 「仕入れたければ、持って来てやるが?」 |
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| 💰 | 「えっ本当!? ……いやいやいや、それって盗ってくるって事でしょ!? そんなに良い品だったら絶対その人の大事な物よ、盗っちゃダメ!」 |
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| 🍎 | 「我儘な奴だ……」 |
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| 💰 | 「売り物に盗品は入れません~!」 |
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| 🎼 | 「ま~た言い合ってる。仕入れ報告会、どんな感じ?」 |
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| 💰 | 「あ、ねぇクローチェはこのブレスレットどう思う? イケると思ったんだけど、言われてみれば確かに……と思っちゃう所も有って……」 |
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| 🎼 | 「どれどれ~? ……ほうほう、お高そう~なやつだ。ちょっと重そう」 |
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| 💰 | 「重さはそんなに無いはずだけど……でも見ただけでそう思うのなら、買い手を見付けるの難しいのかなぁ? ううん……」 |
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| 🎼 | 「……あ、考え込んじゃった。なんかごめん…………ね、テリオン、励ましてよ」 |
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| 🍎 | 「なんで俺が……」 |
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| 🎼 | 「目利きはテリオンだってバッチリじゃん、どういった人にならウケるか分かるんじゃない? ほらほら、は~やく!」 |
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| 🍎 | 「やれやれ…………おい、半人前」 |
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| 💰 | 「今その呼び方やめてくれない!?」 |
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| 🍎 | 「お前は貴族のご婦人に、と狙いを付けたようだが、寧ろ男に向けた方が買い手が付くんじゃないか?」 |
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| 💰 | 「へっ? ど、どうして?」 |
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| 🍎 | 「見栄を張りたいのは女も男も変わらん。それどころか、男の方がその願望は強い。宝石だらけの豪華な装飾品となれば、社交会で自慢して回るにはうってつけの品だ。細身であるのも洗練された一品として映るんじゃないか?」 |
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| 💰 | 「……そう、かな。なるほどね…………よし、やっぱり頑張って買い手を見付けてみせるわ! あたしの目利きもまだまだ磨いていくんだからっ!」 |
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| 🎼 | 「おお~その意気だ! 頑張れ未来の大商人~! ……元気出たね、さっすがお兄ちゃん。最初からこうしたらどうだって教えてあげれば良いのに」 |
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| 🍎 | 「知らんな。……まぁ、こいつは放っておいても勝手に勉強するだろ。俺をあっと驚かせる品を仕入れてきたら、褒めてやるのも考えてやるさ」 |
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| 🎼 | 「鞭からの飴方針? 素直じゃなぁい。……でも二人ってほんと、正反対のようで良いコンビだよねぇ」 |
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| 📖 | (……ん? なにやら良い香りが……おや、クローチェ君だ) |
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| 🎼 | 「…………うん、だいじょぶそう。それで、えーっと、こっちはどうやるんだったっけ……」 |
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| 📖 | (珍しいな、彼女が料理をしているとは。一人旅も長いようだし時々はしていたと聞いていたが、あまり得意ではないとも言っていたはず……何か理由が有るのだろうか?) |
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| 🏹 | 「──あぁサイラス、あなたも来ていたのか。呼びに行く手間が省けた」 |
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| 📖 | 「ハンイット。……そうか、彼女から料理を教えてほしいと頼まれたのだね。して、私を呼びに行くつもりでいたとは?」 |
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| 🏹 | 「それは勿論、クローチェの作った料理を食べてもらう為にだ。料理も出来た方が人の役に立てるのではないか? と思ったらしくてな。まずは腕前を見ようと、ああして作れる品を用意してもらっている」 |
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| 📖 | 「なるほど。……役に立つかどうか、など気にしなくても良いのにな。傍に居てくれれば、皆も私も嬉しいというのに……」 |
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| 🏹 | 「そう言ったとしても、彼女の中では納得がいかないのだろう。少しでも出来る事を増やしたい、サイラスの傍に居ても良いという自信を持ちたい……そんな所なのだろうな。健気じゃないか」 |
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| 📖 | 「……あぁ、本当に。私も、彼女の頑張りに応えなくては……──クローチェ君、何を作っているんだい?」 |
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| 🏹 | 「あっ、いきなり行くのは──」 |
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| 🎼 | 「わあああっ!!? あれっ、せ、せんせ!? なななんでこここここに~っ!!??」 |
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| 📖 | 「キミが料理をしているようだったから気になって。……ふむ、これは……ジャガイモがメインの料理をいくつか作っているのかな。キミが好んでいる食材だったね」 |
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| 🎼 | 「へっ!? あ、あぁ~、うん、そう……えと、好きだし、簡単なのは作った事有るし、まずはこの辺からっていうか……いやでもワンパターンっていうか……」 |
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| 📖 | 「お、こちらの皿はもう出来上がっているのか。味見しても?」 |
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| 🎼 | 「え? えっ、でもそれ、ただ切って揚げただけのやつだし……」 |
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| 📖 | 「もぐ…………うん、カラリと揚がっていて美味しいね」 |
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| 🎼 | 「もう食べてる!? あああの、しょっぱくない? だいじょぶ……?」 |
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| 📖 | 「大丈夫、振ってある量もちょうど良いよ。気を付けないとどんどん食べ進めてしまいそうだ。こちらは……見たところガレットのようだが、少し厚みが有るな。何か挟んであるのかい?」 |
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| 🎼 | 「え、うん、ハンイットが教えてくれてね、お肉とかチーズとかを入れると、もっと美味しくなるって……」 |
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| 📖 | 「──うむ、美味い! シンプルなものも良いが、これらを合わせると全く異なる味わいになるのか……ハムとチーズとジャガイモ、素晴らしい組み合わせだ」 |
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| 🎼 | 「また食べてる!!? い、良いのかな、途中なのに……あっやば、入れ忘れてる! えと、ええっとぉ……」 |
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| 📖 | 「……そちらのフライパンと鍋では何を作っているんだい?」 |
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| 🎼 | 「え、う、タマネギとベーコン入りの、ガーリックポテト? と……鶏肉とトマトと、色々を一緒に、煮るやつ…………あの、せんせ、すんごい横から見てくるね……」 |
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| 📖 | 「どれも美味しそうな香りがするから食べたいな、と思って。煮ている方は、パンと一緒に食べるのも良さそうだね」 |
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| 🎼 | 「そ、そうかも、だけど…………うう、じぃっと見てても、まだ出来ないよお~……?」 |
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| 🏹 | (……意外と大丈夫そう、だな。てっきりクローチェは驚いて逃げてしまうかと思ったが、火を使っているから手を離さなかったのか、サイラスがグイグイ押してくるから圧倒されているのか……どちらにせよ、なかなか微笑ましいやり取りじゃないか。心配しなくても大丈夫そうだ。声を掛けるのは、もう少し見守ってからにしようかな) |
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| 📖 | 「クローチェ君は磨き上げた踊りの才から素晴らしい脚力を備えているが、腕力もそれなりに有るようだ。やはり繊細で美しい舞を披露するには指先まで意識し、保つ為の筋力も必要なのだろう……その細腕のどこに、と驚いてしまうがね」 |
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| 🎼 | 「ふふん、頑張ってるよお? ムッキムキになっちゃうのは困るから、付きすぎないようにしなきゃ~って注意しないとなんだけどね。テリオンも細そうで実はムッキ~だよねぇ……えいえい」 |
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| 🍎 | 「つつくな。……俺も必要だから身に付けただけだ。ガキにも容赦無いクソ野郎ばかりの世界だからな、腕っ節が強くないとやってられん。学者先生は……見た目通りだな。どうせ座ってばかりなんだろ?」 |
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| 📖 | 「確かに室内で過ごす事が多いから、キミ達のようにしなやかで逞しい筋肉というのは付いていないな。しかし、学者は部屋で書物を読み漁るだけではないよ。フィールドワークを行う為にも基本的な筋力は必要だ、適度に歩くようにはしている。こうして旅に出た事で、以前よりは付いているのではないかな」 |
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| 🎼 | 「でも人を運んだりは出来なさそう~な貧弱」 |
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| 📖 | 「う、うむ……人を運ぶのは難しいね。成人男性の平均以下なのかもしれない、というのは少々情けないか……私も何か鍛錬を始めてみようかな」 |
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| 🍎 | 「旦那に鍛えてもらったらどうだ? 剣を扱う時のへっぴり腰も直してもらえ」 |
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| 🎼 | 「おぉ、騎士さま直伝! すごそう」 |
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| 📖 | 「相談はしてみるよ。”お前には向いていない”と渋い顔で断られてしまうかもしれないがね……」 |
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| 🎼 | 「身近な所からやってみるとか。本をたっくさん抱えて運んで~とかしてれば、少しは筋力付くんじゃない?」 |
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| 📖 | 「そうだね、一度に纏めて運ぶ事が出来たら早く読書を始められるのも良い点だ。折角だから他の部位も鍛えておきたい所だが……」 |
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| 🎼 | 「ふんふん……じゃ、腹パンしよ」 |
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| 📖 | 「……えっ? な、何故そうなるんだい?」 |
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| 🎼 | 「今ドスッて来るとこうだから、次に受ける時は耐えられるように鍛えよう~っていう目標立てる感じ? 実体験に勝るものはない、みたいなの先生も言うじゃん」 |
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| 📖 | 「それはそうだが、いきなり腹に食らうというのは……」 |
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| 🎼 | 「テリオン、押さえといて~」 |
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| 🍎 | 「よし、来い」 |
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| 📖 | 「いや来いではなく、テリオンも彼女を止め──」 |
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| 🎼 | 「せぇいっ!!」 |
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| 📖 | 「ぐうっ!!? …………い、良いパンチだ、クローチェ君…………これを耐えられるように、か……」 |
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| 🍎 | (……乗ったは良いが、こいつ本当にやったな……提案というより、実はサイラスに溜まってた鬱憤を晴らしたかっただけじゃ……?) |
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